声優・下野紘が5月9日に東京・なかのZERO大ホールで朗読祭『サウナの『ウ』~桜木春馬編~』を開催した。
以下、公式レポート部分。
本作は、約1年前に上演され大好評を博したサウナ男子朗読劇「サウナの『サ』」の待望の続編。出演は前回に引き続き、下野紘、小野大輔、土岐隼一の3名。劇中では前作から「2年後」という設定で、それぞれが成功を収めつつも新たな試練に直面する様が描かれた。朗読劇というフォーマットを軽々と飛び越え、アドリブとフィジカルなアクションが乱れ飛ぶ爆笑コメディから、息を呑むようなシリアス展開まで、3人の役者としての圧倒的なポテンシャルと絆の深さを堪能できた極上のエンターテインメント。今回は、そんな笑いと感動に包まれた公演の模様をレポートする。
開演前、ステージ上のスクリーンには前回のダイジェスト映像が映し出されていた。映像を見ながら約1年前の記憶を呼び起こすことができる粋な仕掛けに、客席からは早くも笑い声が漏れており、会場全体がサウナのように温まり、物語の世界へ入り込む準備は万端といった様子だ。
いよいよ開演。舞台上には、左手にサウナの座台、右手に外気浴用のテラスが設置され、中央がフリーゾーンという前回同様のセットが組まれている。まずは中央に立つ下野にピンスポットが当たり、「ここに、サウナの『サ』という本がある」と静かに語り出す。土岐が演じる売れない小説家「齋藤」が書いたエッセイ本がバカ売れし、小野が演じる「佐野」のサノサウナは予約困難な聖地に。そして下野演じる「桜木」は実家の定食屋で修行中という、前作から2年後の状況が説明されていく。
冒頭のキャラクター紹介から、すでに3人のエンジンは全開だった。下野のナレーションに合わせて小野にスポットが当たると、小野は渾身のキメ顔を披露して最初の笑いが起きる。続けて土岐が紹介されると、土岐は女豹のようなキュートなポージングで応え、客席からはさらに大きな笑い声が。キメ顔とポーズだけでこれだけの笑いを誘えるのは、観客がすでに彼らのキャラクター性や関係性を熟知しているからこそだろう。さらに下野は、冒頭から「ここの開場時間、終わっちゃうよ。みんな帰れなくなるよ」といきなりのメタ発言を投下。冒頭から一気にヒートアップする空気感に、前回を超えるコメディ劇を見せようというキャスト陣の並々ならぬ意気込みがヒシヒシと伝わってきた。
サノサウナに久々に集結した3人。桜木が東京に支店を出すために上京してきたという喜ばしい報告ののち、何気ない会話から「カレーに合う飲み物」についての論争が勃発する。ここで佐野に完璧に論破されてしまった下野(桜木)は、突然キツツキのように身体を前後に動かしながら「なんで整うっていうのー?」と強引に話題を転換。この下野の奇妙な動きに小野と土岐も瞬時に同調し、3人揃って謎の「キツツキポーズ」を披露すると、会場からは大きな拍手が巻き起こる。
随所にアドリブを挟み、時折台本から大きく逸脱してコメディに走るスタイルは前回以上に研ぎ澄まされている。スキあらば手数を繰り出す小野に、ここぞという時に鋭いボケを放つ土岐。そして、そんな二人に振り回されながら、ボケにツッコミにと大立ち回りを演じる下野。一方で、自身のアドリブ芝居に思わず照れて顔を伏せてしまった下野に対し、小野が「大丈夫か?」「やれるな?」と優しく声をかけるなど、3人の素顔の関係性が垣間見える瞬間も。キャラクターとキャスト本人の境界線がどんどんと曖昧になっていく、この朗読劇ならではの醍醐味に、観客はぐいぐいと引き込まれていく。
小気味よいコメディが続く中、前半のハイライトとも言える劇中劇「裏切りのサウナハンター」のコーナーへ。ここで土岐から「テーマソングの歌唱」を無茶振りされた下野。客席からの「待ってました!」と言わんばかりの歓声と手拍子に応え、覚悟を決めた下野が披露した即興ソングは、なんと約1分間にも及ぶ大作だった。静かなメロディから入り、サビに向けてエモーショナルに展開していく見事な構成力は、即興とは思えないほどのクオリティで、圧倒的な歌唱力に会場からは惜しみない拍手が送られた。またこの劇中劇では、ゲスな悪役をノリノリで演じる小野と、王道熱血ヒーローを演じる下野の掛け合いが見どころ。しかし、ここで最も観客の視線を奪ったのは土岐だった。「スクール水着を着た一般人の少年」という破天荒すぎる役柄をコミカルに演じきっただけでなく、高速ナレーションや効果音の再現、果てはオペラ歌手ばりのハイトーンボイスまで見せつけ、その多彩なスキルを遺憾無く発揮していた。
しかし、物語はここから一気にシリアスな展開へと舵を切る。なんと桜木が、出店資金の3000万円をコンサルタント(詐欺師・宇田川)に持ち逃げされてしまったのだ。絶望の中、雨に打たれながら家路を歩く桜木のモノローグ。下野のシリアス100%の鬼気迫る芝居は、それまでのコメディ一色だった空気を一変させ、観客も息をするのを忘れるほど固唾を呑んで見守っていた。役者・下野紘の凄みをまざまざと見せつけられた瞬間である。
だが、そんな重苦しい空気も長くは続かないのがこの3人だ。佐野と齋藤が用意した「詐欺師宇田川サンドバック(等身大の人形)」を使った憂さ晴らしのシーンでは、小野と土岐による身体を張ったプロレス芸が炸裂。土岐が見事なロメロ・スペシャルを決めれば、小野は豪快なブレーンバスターを披露。特に小野のブレーンバスターの際には、土岐の巧みな煽りによって会場全体から「テリー!」コールが巻き起こるなど、もはや朗読劇の会場とは思えない熱狂空間と化していた。
結局、佐野と齋藤の「サノサウナの隣に定食屋桜木を併設する」という粋な提案により、再び前を向く桜木。「くさや」や「ミラージュ」など、前作からのファンをニヤリとさせるキーワードも飛び出しつつ、3人の絆はより強固なものとなっていく。こうして迎えた最後にして最大の盛り上がりは、劇中劇「裏切りのサウナハンターパート5」。新たな悪役として君臨する小野と、土岐のクセの強すぎるナレーションによって、ステージ上はカオス状態に。そんな限界突破のテンションの最後を締めくくったのは、やはりヒーロー・下野だった。絶体絶命のピンチに陥った下野は、ステージ奥へと移動して大きく股を開く。すると、背後のスポットライトが下野の股間越しに強烈な光を放ち、「天に轟け!真っ裸熱波ーーー!!」という必殺技のシャウトと共に照明は最大光量に。この衝撃的な「股間ビーム」の演出に、会場中からこの日一番の爆笑と大拍手が巻き起こった。小野もまた「おんぎゃああああああああーーー!!」という見事な断末魔を叫んで倒れ込み、大熱狂のまま本編は終幕となった。
本編終了後、観客席に深々とお辞儀をして一度降壇した3人は、すぐにステージへと戻りアフタートークへ。開口一番、下野が口にしたのは「カレーに牛乳、合います」という爆弾発言。劇中では「カレーには水」と頑なに主張していた桜木だが、下野自身は牛乳派だったため、演じながらずっとモヤモヤしていたと告白。するとすかさず小野が「僕、お水派なんです(笑)」と暴露し、キャラクターと本人の好みが完全に逆転していたという事実に会場は笑いに包まれた。
そして話題は当然、最後の下野の「股間ビーム」の演出へ。実はこのシーン、リハーサルで下野が相当なこだわりを見せ、立ち位置と姿勢を何度も調整し、ベストポジションに「バミリ」までつけて臨んだというプロフェッショナル(?)な裏話が明かされた。さらに、土岐と小野の見せ場であった人形とのプロレスシーンも、リハーサルで何時間もかけて見え方を研究したという。小野のブレーンバスターからの「3カウント」の流れは台本にはない完全アドリブだったが、音響スタッフが急遽ゴングの音源を用意してくれたという裏話も飛び出し、演者だけでなく裏方スタッフも含めたチーム全体の熱量と連携の素晴らしさが伝わってきた。
最後は、キャスト3人から観客へのメッセージ。土岐は「下野さんと大輔さんとやらせていただくのは本当に楽しくて、毎回刺激を受けています」と語り、「ぜひ「サウナの『ナ』」をやりたい!」と次回作への熱い思いを口にする。これには下野も「ここまで来たら、やらざるを得ない気がする」と激しく同意。小野も「この3人だと無限に楽しい時間が作れる」と振り返り、下野と土岐を「心強い仲間」と最大限の賛辞で称えた。それを受けた下野は「協力プレイが前回よりもできるようになった」とチームワークの確かな進化を実感している様子で、「次回はもっと面白いものになると思う」と力強く意気込みを語った。さらには3人が降壇した後、スクリーンにはサプライズとして、2026年10月31日に「下野紘音楽祭」が開催されるという特報映像が映し出された。これには客席から喜びと驚きが入り交じった悲鳴のような歓声があがり、イベントは最高のボルテージを保ったまま幕を下ろした。
2時間以上にも及んだ朗読劇だったが、体感時間はあっという間だった。前回以上にコメディ要素がパワーアップし、腹がよじれるほど笑わされたかと思えば、下野の本気のシリアス芝居に胸を打たれる。最初から最後までトップギアで駆け抜け、笑いと感動、そして演劇的な身体表現までもを融合させたこの唯一無二の朗読劇。最強のチームワークを手にした3人が見せてくれるであろう、さらなる続編「サウナの『ナ』」の開催を、今はただ心待ちにしたい。
■イベント情報
下野紘音楽祭
【日程】2026年10月31日(土)
【時間】開場:16時 開演:17時
【出演】下野紘
【ゲスト】GRANRODEO・畠中祐・土岐隼一
【会場】アリーナ立川立飛(〒190-0015 東京都立川市泉町500-4)
※その他の詳細は後日下野紘プロジェクト公式サイトおよびXにて公開します。













