俳優・芳根京子が11月10日に東京・神楽坂の赤城神社で主演映画『君の顔では泣けない』(監督:坂下雄一郎/配給:ハピネットファントム・スタジオ)ヒット祈願イベントを“キンプリ”の愛称で親しまれているアイドルグループ『King & Prince』髙橋海人とともに開催した。
作家・君嶋彼方氏が2021年9月に上梓したデビュー作『君の顔では泣けない』。第12回「小説 野性時代 新人賞」を受賞し、発売前重版をかかった人気作となる。物語の始まりは、高校1年生の夏。プールに一緒に落ちたことがきっかけで、心と体が入れ替わってしまった坂平陸(さかひら・りく)と水村まなみ。これは何かの間違い、と元に戻ることを信じその方法を模索し奔走する。しかし、誰にも言えない秘密を抱えた陸とまなみは、15年経っても元には戻らなかった。進学、初恋、就職、結婚、出産、親との別れ……人生の転機を入れ替わったまま経験していくふたり。しかし30歳の夏、まなみは「元に戻る方法がわかったかも」と陸に告げる……。
トーク前に赤城神社をバックに記念撮影を開催。2人で口角をあげるようにするために、「いー!」と言いながら楽しげにフラッシュを浴びていた。
社殿内でトークイベントが開催。そのバックパネルが劇中の喫茶店「異邦人」のもので、芳根にはアイスコーヒー、髙橋にはコーラがふるまわれ、2人「かんぱーい!」と声をそろえてトークを始める。
芳根は本作の脚本を読む前に15年も入れ替わっているという設定に「ドキドキワクワク」したそう。実際に脚本を読むと、「ファンタジーなんだけどリアルで、くすっと笑えるけどコメディではなくて、この現実世界の延長線上というか。どこかにこんな2人が本当にいるのかもしれないって思うような、その不思議な感覚になって、その感覚をみなさんにちゃんと届けできなきゃなっていうプレッシャーを感じたのを、結構今でも鮮明に覚えてます」と、振り返る。
髙橋は、脚本を読む前から「タイトルがすごい引っかかったんですよ」と、心に刺さったという。そこでタイトルから想像を広げたそうで「なんか理解できる……しやすいようで、なかなか難解なタイトルじゃないですか。これがどういう意味なんだろうっていうのを辿っていくみたいな作業をして、結構楽しかったですね」というアプローチをとったそう。その結果、「今までの入れ替わりものとは違うぞっていうところもあります。くすっとできるんだけど、コメディに全振りしてる作品でもないし、シリアスすぎないし、なんか監督っぽい、ちょっと力の抜けた感じもあるし。なかなかな覚悟では、出演はできないだろうなと思って」と、気持ちが引き締まったそうだ。
そうして撮影に入ったが、髙橋は「撮影が終わるまでは、ずっと怖かったんです。自分のアプローチは、合ってるのかどうか……っていうのをお芝居をしている芳根ちゃんの表情だったりとかを見て、“あっ、なんか引き出せたな”って思ったら、自分の中では合格っていうか。坂下監督も、多くを語る人じゃないんですけど、『OKです』って言う言葉をもらったら、大丈夫だったのかなみたいな。そういう感覚をちょっと信じてやってました」という気持ちで演じていたそうだ。
この髙橋の話に誘われるように、芳根も「リハやる前までは、1人でとにかく考えてる時間が1番怖くて」と、告白。そこでバックパネルのセットにもなっている喫茶店『異邦人』でのシーンを試しにやってみて、「私たちがやりたいことは外見の話じゃないよねって」という気づきになり、「あのリハはほんとに大きかったなって」と振り返っていた。
髙橋との撮影を通して芳根は、「すごいおこがましいけど、生き方が似てるのかもなって思う瞬間が何度かありました」というと、髙橋も「踏み入らないポイントはありつつ、でもざっくりと体を借りてるっていう関係性だったりとかっていうのは、まなみと陸だけじゃなくて、自分たちもなんか持ててた感覚は、あったかもしれないですね」と、気持ちを共有する部分があったのだそう。その状況での演技により、芳根は「お芝居をしながら何度もごめんって思ったんです。“本当ごめん、そんな顔させたくないのよ”って思いながら」という境地にも至ったのだそうだ。
その後、その感覚がどうなったのかへ、芳根はが「今年の夏前に、スタジオで別の作品の撮影をしてる時に、ばったり廊下でお会いした時にその時も、すごい戦ってたみたいなんです。大変なシーンの撮影日だったっぽくて、私を見て、(髙橋が)『もう1人の俺!』って言って、近づいてきたんですけど、“もう違うよ”って言って」と返したのだそうで、髙橋が「そんなこと言わないでくださいよ~」と食い下がったが、芳根は「もう違う人生だよ、頑張ってねって」と声をかけたというやりとりをしたのだそうだ。
そんな思いをして作った作品なだけに、芳根は「戦った作品になりました」と、振り返り、髙橋も「なんか共闘っていう言葉が、ふさわしい」とうなずいた。
イベント中、髙橋が伝えたいことがうまくまとまらずに、トークが止まりかけると芳根が、「頑張れ」と応援したり、「もう1回飲む?」と、髙橋に振る舞われたコーラを飲んで時間を稼ぐよう呼びかけることも。そんな髙橋だったが、終盤はいろいろ考えて話して喉が乾いたのか、芳根にすすめられる前に、ストローでチューっとコーラを飲んで喉を潤す様子を見せていた。
取材・撮影:水華舞 (C)エッジライン/ニュースラウンジ



