アイドルグループ『NEWS』加藤シゲアキが監督として参加しアイドルグループ『Aぇ! group』正門良規とともにW主演するオムニバス映画『MIRRORLIAR FILMS Season7』(配給:アップリンク)内の作品『SUNA』。同作と加藤浩次監督の作品『Victims』の場面写真と、著名人からのコメントが5月1日に公開された。
『MIRRORLIAR FILMS』(ミラーライアーフィルムズ)はクリエイターの育成発掘を目的とする短編映画制作プロジェクト。2021年から2022年に劇場公開したSeason1~4では「変化」をテーマに、俳優、映画監督、漫画家、ミュージシャンなどが監督した36本のショートフィルムを発表。Season5~8では、「企業版ふるさと納税」の制度を活用した行政の地域振興事業として、撮影支援やワークショップ、上映会が行われるなど、映画製作を通して地域の魅力発見や人々の交流を生み出している。加藤の作品とともに加藤浩次初監督の映画『Victims』、香月彩里監督による映画『ヒューマンエラー』、武田成史監督による映画『KUTSUYA』、坂本ショーン監督による『ウエディング』の5作品が上映を予定している。
『SUNA』は、砂によって窒息死するという奇妙な事件が多発する東海市が舞台。本当に人の仕業なのかと怪しむ刑事の狭山(加藤)と遠山(正門)。そんな中、遠山の家に砂が落ちている現象も発生。骸骨や炎に包まれる遠山など不穏な映像が畳み掛けられる中、「あいつら、俺の砂を盗んだんだよ」という謎の男の声。その後も次々に起こる「砂」による窒息死。これは呪いなのか、はたまた誰かの仕業なのか――という物語。
公開された場面写真は、光と影のコントラストがよく効いた3枚。大型重機をバックにしたスーツ姿の2人の全身写真や、正門がスーツの上着のボタンが開いた状態で佇む、まるでメイキングかのようなスタイリッシュなポーズのようにも見えるカットも公開となった。
また、『SUNA』への著名人からのコメントは以下。
■逢坂冬馬(小説家)
サスペンス、ホラー、そして文学に対する作者の憧憬と才気が炸裂している。
本作が映画監督、加藤シゲアキのプロローグとなるのだろう。
「砂」が恐ろしいものに思えてくるほどに反復する恐怖演出、ダブル主人公の演技力、ともに必見!
■中村文則(小説家)
僕の故郷の東海市が、こんなに引き込まれる映画の舞台になったことが、とても嬉しい。安部公房の『砂の女』の砂が不毛――同時にそれはこの世界のある意味で真の姿でもあるけど――を表すとしたら、この映画での砂の描き方には、現代への興味深い批評すら見えるようで、なお引き込まれる。
■宇佐見りん(作家)
例えば、ショベルカーが砂を崩す様は太古の生物が長い首をもたげ何かをこそげ食うようであるし、部屋にまで侵入し執拗にこびり着く砂は近年の流行り病を連想させもする。阿部公房がかつて砂に見た人間社会の不条理は、いかに受容され変貌を遂げたのか?崩壊、欲望、束縛に安寧、砂に照射される無限のイメージに身を任せたい。
■Aマッソ・加納愛子(芸人)
堆積、風化、侵食。砂の特性は、人生のそれと同じだ。
砂に惹かれた加藤シゲアキの人生はどれほどの経験を堆積させてきたであろう。
人あらざるものの呪いに触れるとき、日々は簡単に揺らぐ。
しかし抗えない呪いもまた、彼の内側にある何かなのかもしれない。
■宇多丸(RHYMESTER)
加藤くん久々の監督作はなんと、『怪奇大作戦』ばりにモダンと伝奇が交錯する……あるいはリンチばりにノワールと悪夢的ビジョンが混じり合う、スタイリッシュ&ストレンジな、ミステリー/ホラー! 短編ゆえに、あえて全ての情報を提示しきらず、ひたすら余白と余韻のなかに観客の想像力を誘い込むミニマルな語り口に徹しているあたり、小説とはまた明白に異なるモードで、改めてその資質の豊かさにも、驚かされる。
■ピース・又吉直樹(お笑い芸人)
題名が象徴する通り、物語も登場人物も、風や雨に打たれて形を変え続ける砂のようでした。その儚さと変化に揺さぶられる恐ろしさが、妙に心地よかったです。繰り返し体験したくなる不思議な余韻が心に残りました。
■人間食べ食べカエル(人喰いツイッタラー)
冒頭の砂まみれの死体が凄まじいインパクト!これで一気に引き込まれて、そこから先は現実とも妄想とも取れぬ静かな狂気から逃げられない。砂だけで恐怖を煽るストイックな構成。15分の中で静と動を巧みに織り混ぜる。加藤シゲアキさんには、日本を代表するサイコホラー監督になれるポテンシャルがある。
■隈研吾(建築家)
砂という異物を扱いながら普遍的な問題を描いているエンターテイメントミステリー。
マテリアルと日々戦っている建築家として刑事たちに共感してしまった。
※記事内画像は(c)2024 MIRRORLIAR FILMS PROJECT