俳優・本木雅弘、森口瑤子が9月16日に都内ホテルで朗読劇『たとへば君 四十年の恋歌』(上演台本・演出:星田良子)合同取材会を歌人・永田和宏氏とともに開催した。
永田氏と妻で歌人・河野裕子さんが出会い結婚し、河野さんが64歳で亡くなるまで四十年にわたりお互いを恋の対象として詠み合った相聞歌など夫婦の記録をつづった書籍『たとへば君 四十年の恋歌』を朗読劇化した作品。2025年には浅野ゆう子と中村梅雀のコンビで上演されたが、今回は本木が永田和宏役を、妻の河野裕子役を森口が演じ読む。劇伴は中村匡宏氏によるオリジナル楽曲をピアノ・西尾周祐氏、チェロ・中西哲人氏による生演奏で送る。
本木は本作のオファー以前に永田氏と話したことがあるという。それが3年前に出演した番組のカメラマンスタッフが永田氏の長女と結婚していたこともあり、その紹介で1年半前に食事をしていたと説明。その際に永田氏から「いつかやってもらえたら」と言葉をかけてもらった縁がつながったという。
本木にとって、「朗読劇が初めてで、舞台も1995年以来で31年ぶりなんです」というほど久しぶりだという。オファーを受けた経緯として、「出不精であまり仕事に携わらないようにしていたんですが、昨年12月に60歳になりまして還暦イヤーの今年は、新しく生まれ変わるという意味や、新しい刺激をという意味をこめて、物理的にできうる限りは、オファーを受けてみようと思って。それでスケジュールが合った」ことがきっかけという。それでも受けてみて、「いまふわふわとした緊張感の中にいます」と、現在の心境を話した。一方、森口は演出を担当する星田良子氏が好きだったことが縁で声がかかったとしていた。
永田氏の2人の印象へ、「格好良すぎるし美しすぎるからどうしようと(笑)」と、ニコニコと話す。本木へは「本当に素晴らしい俳優さん」といい森口へは「森口さんも本を読んでいただいたのが嬉しいし、河野裕子というのはね、私が言うのも変ですけど、与謝野晶子以来の歌人だと言われていて、繊細ですけど、笑いだしたら止まらない陽気な人なんです。以前、エッセイを書いた時に、河野の面白いところを出せなかったので、舞台でそこを出してもらえれば」と、期待を寄せると森口はプレッシャーを感じているようだった。
この日、公演ビジュアルも初公開。本木によると「予算度外視して撮ってくれて」という1作とのこと。その印象へ「河野先生と永田先生の時間が重なっているような、すれ違っているような、一体となっているようなビジュアルです。後から合成ではなく、スタジオで私と森口さんが舞台に立つみたいに並んで赴くままにポーズをとる。どういう重なりが出るかというライブ感のある撮影で、そのなかで奇跡的な瞬間を捉えた撮影になっています」と、解説すると、森口は「はじめましてでこの撮影で」と補足。さらに森口は「オーラを感じて、こうしてこうしたいなと思って。私としても満足した作品になっています」と、笑みが浮かんだ。
すでに台本読みのけいこも行われている。そのけいこを通して、本木は「さまざまな歌に乗せられているものがあって、闘病の壮絶な歌もあるんです。それだけではなく、日常の些細なことを拾ってそこに潜む、あらがいなどに切り込んでいるように感じました。ただ恋の優しさだけじゃない、人間の凄い葛藤、深い優しさが見えてきています。そういう世界観を短い時間のなかで、たくさんの色合いを表現できるかというのは自分たちの挑戦だと思っています。台本読みでは、客観的に自分の中を通じさせて朗読するという意識でしたけど、演出の星田さんから『もっと我がことにしてくれ』『追憶にひたるというより、僕の大好きな河野裕子のことをみなさんにお話させてくださいと喜ばしく語る愛の形』や『言葉の描写のなかで観ているお客さんに風景を感じさせてください』というオーダーも入りました。それが本当に自分でも、カメラの前での映像世界を中心にやってきたので、久しぶりに相当殴られそうな経験になりそうだと思いました」と、いまだ掴みきってはいない様子を見せる。
さらに本木は、「先ほど星田さんに、『愚鈍さを出してほしい』と言われて」と話したところ、会場後方にいた星田氏から「愚鈍だけじゃなくて、『愚鈍で愚直です』」とツッコミが入り、本木は「私のなかで散らかってますよね」とひたすら苦笑い。「森口さんは地に足ついているんです」と本木が森口をあげると、森口も「私も散らかっていて、台本読みから帰ってからすぐにビール飲みました(笑)」と、こちらも苦心している様子を見せていた。
ほかにも、永田氏が河野氏にあてた歌は生前は500首、亡くなってからも300首を詠んでいると話しており、本木は「ごちそうさま」と楽しげにツッコんでいた。
最後に1人1人からメッセージを寄せることとなり永田氏は「言葉と言葉の間にある隙間をどれだけ補填できるか。作者はこう言ってるけどその奥に何が言いたいのかを自分で感が手感じることがとても大事で歌の読みはそこにあると思います。今回のことも2人の口から出た歌を作者は何を言いたいのか感じながら観ていただければ」といい、森口は「結局は私がまずキラキラして、本木さんが演じられる先生を心から愛して夫婦の形をしっかり見せられれば。あとはみなさんに委ねる……ではないですけど、いろんなことを感じてもらえると思います」と、メッセージを送る。
本木は「言葉だけで伝えきれないものをどう伝えるかと思っています。感覚的に本を読んでいただけると、みなさんなりに拾えるものがあると思います。ある種の共感や親しみを持って観て頂ければ。映像で残すものではないので、みなさんとの一期一会の瞬間でなにか通じあったりできればと思っています」と、コメントしていた。
朗読劇『たとへば君 四十年の恋歌』は10月28日から11月4日まで新国立劇場 小劇場にて上演予定!
取材・撮影:水華舞 (C)エッジライン/ニュースラウンジ




