加藤シゲアキ「若い読者の方に本の楽しさを」!丸山隆平へ「お礼も言いたい」【会見ロング後編】

加藤シゲアキ「若い読者の方に本の楽しさを」!丸山隆平へ「お礼も言いたい」【会見ロング後編】4

 中編(加藤シゲアキ「これが直木賞の力か」と実感した出来事は?書店員からかけられた印象的な言葉と「続けることが自分を受け入れてくれた小説界に対する恩返し」)より

 ――小説に出てくるドラムを参照にした『関ジャニ∞』の丸山隆平さんは本を読んでくれた?
 加藤:どうなんですかね。前回の会見のときにお話が出たので(丸山から)『名前出してくれてありがとう』とか『読むねー』とか。でも、翌日に『5冊買おうとしたら1人1冊までですと言われた。5冊買えなかったよー』『今度、買って配るね』と。今回の話が公になったタイミングであらためて連絡しようかなと思っています。お礼も言いたいなと思っています。

 ――マッチングアプリと高校生をテーマにしたのはなぜでしょうか?
 加藤:いろんな高校生たち、高校生に限らずSNSというものはいろんな方々がいろんな考え方とともに使用しているものだと思います。作品を書くきっかけになったのは、僕がやらせてもらっているバラエティ番組でマッチングアプリの是非を討論するというきっかけがありました。マッチングアプリで出会った方、結婚された方など。メリットという意味でもたくさん伺う一方で、危ないんじゃないの?とかリスクもあるんじゃないの?とかネガティブな側面を話す方もいて。そういった議論も白熱した場面を目撃して、いろんな方がいろんな意見を持つもので、これはなにか物語が生まれるんじゃないかなと思って。それと、自分が30歳を過ぎたくらいで、高校生を書くのはいまが1番いいかなと思って。近すぎず、遠すぎずという感じで。青春群像劇とSNSマッチングアプリというものをかけ合わせて、何か青春群像劇で物語のうねりが生み出せるんじゃないかなと思ったのが最初のきっかけです。

 ――読む人にどんな心の動きが出てくれたら嬉しい?
 加藤:僕、書いていて思ったのが、SNSやアプリというものは、あくまでツールの1つにすぎないということを思いました。そこを通してつながっているのは、やっぱり人なんだと。文面ばかり読んでいると、相手が記号であったりとか、何か人間ではないような部分を感じることもあるという瞬間もあるのではないかなと思いますけど、やっぱりそこにいるのは全員、人なんだということは忘れがちですよね。あくまで、SNSはハサミとか定規と変わらないツールなんだという部分を冷静にドライに向き合えていた方が、より効果的に使えるんじゃないかなと、僕自身は感じています。

 ――誹謗中傷が問題視されるSNSがテーマ1つだが、若い人の背中を押せるような部分はある?
 加藤:SNSに限らず、僕は小学生のころからジャニーズ事務所で活動させて頂いていて、いろんなお言葉を頂いてここまでやってきました。厳しい言葉も、いわれなき誹謗中傷もありました。やっぱり苦しいですよね。傷つきますし。そういったなかでどう受け止めるか。必要以上にそのコメントに敏感にならなくてもいい。僕自身のことでいうと、厳しい言葉というものはすごく残ります。作品のレビューを読んでいても、100褒められても1の厳しい意見の方が印象に残ってしまうことがあるんです。そっちの方が印象に残ってしまうんだと。人間というのはそういうものなんだと僕自身は感じます。

 その厳しい言葉がすべてみたいに受け止めてしまうけど、ちゃんと100分の1だよねとドライに。そういうものをどう受け止めれるかというのが、気にしなくて済むものなのかなと思ったりします。それが人生のすべてにならないように、距離感や向き合い方は大事だよなと書いていて思いました。本作ではSNSの闇という部分にスポットを当ててないのはそういう理由で、ただそこにあるものを通して人と人とがどう出会うかで、人間が成長していくということがあると思います。直接出会うことがすべてだとは思っていませんが、そこで成長する部分がきっとあるんじゃないかなと。

 本作の帯にも書かれていますが『私は、私を育てていく』というのはあくまでそれは自分という種に対して、水であったり、肥料であったりが、ときには大事かもしれません。でも外的な要素で、育つのは自分なんです。自分がどういう花を咲かせるかというのを、まずは大事にして生きていくために、(SNSを)使うのか使わないのか、どうやって向き合うのが大事かなと思います。すいません、長くなりました。

 ――加藤さんが小説を書かれるということは、ジャニーズ事務所に所属しているということで小説を読む人の間口を広げる、すそ野を広げるということで、すごく大きな意義があると思うのですが、受賞した場合に、責任が重大というと言い過ぎかもしれませんが、役割をなんらか担うことにもなるかもしれません。そのあたりの自身の役割をどう感じている?
 加藤:初めて小説を書いたときから思っていましたが、僕が小説界にお邪魔するということは、いままで本に触れなかった方々に飛び込む機会になるだろうと。その責任というものは背負ってきているので、いまあらためて、不安かというと実はあまりないです。それは生意気ですけど、ここまで培ってきた自信があるかなと思います。受賞できるかという自信はまったくありませんが、作品に対してはすごく自信があるので。とくにこの作品は若い読者の方に本の楽しさを、初めてでも実感して頂けたらという気持ちが結構強くあったので、そこを意識して書きました。やっぱり楽しくないと読みたくない、おもしろくないと読みたくないと思いますので、とにかくおもしろく本を読む。気づいたら、読む前と読んだ後で、人生の景色が変わって見えるそういった作品になるよう心がけてきました。

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