黒崎博監督「映画 太陽の子」三浦春馬さんの話に涙で言葉出ず……柳楽優弥、有村架純と3人で食卓囲むシーンへ「『いい兄弟だなぁ……』と思いました」

黒崎博監督「映画 太陽の子」三浦春馬さんの話に涙で言葉出ず……柳楽優弥、有村架純と3人で食卓囲むシーンへ「『いい兄弟だなぁ……』と思いました」1

 俳優・柳楽優弥、有村架純、三浦春馬さんらが出演している現在公開中の『映画 太陽の子』(監督:黒崎博/配給:イオンエンターテイメント)。本作の黒崎監督、森コウプロデューサー、浜野高宏プロデューサーによる『“太陽の小部屋”トークイベント』が15日、渋谷HUMAXシネマで開催された。

 太平洋戦争末期に存在した「F研究」と呼ばれる日本の原爆開発の事実が入っており、軍の密命を受けて研究した京都帝国大学・物理学研究室の若き科学者・石村修(柳楽)らの青春を通して描いている。修の幼馴染・世津役を有村、修の弟・裕之役を三浦春馬さんが演じている。

 本イベントでは初公開のメイキング映像とともに進行。最初に紹介されたのは、有村架純演じる世津が工場での労働で炉に石炭を入れるシーンの様子。この日が有村にとっては撮影初日となったが、森プロデューサーは「ものすごく暑い日だったんですが、有村さんの初日ということで現場もすごく緊張感がありました。(炉の)火はガスで燃やしていて、そこに石炭を入れていくんですが、閉めきっての撮影ですごい温度で、そこにいるだけでクラクラしちゃうくらいでした。有村さんはすごくストイックで、そんなに言葉は多くないけど、ポイントですごく鋭いことを言う、頭の良い方で、女優としての深さを感じました。この暑さの中で、監督は必死の表情を引き出すために長回しをするんですけど、有村さんは何度やっても『暑い』とか『苦しい』といった言葉をひと言も言わないんですね。感服しました」と、称える。

 黒崎監督は「そもそも撮影のスケジュールは助監督が組むのですが、最初に何を撮るかってすごく大事なんです。(助監督の組んだスケジュールを見て)なるほど、ここからやるのかというスタッフの意思を感じました。実際に(本編で)使うのは30秒くらいなんですけど、10~15分くらいずっとやってて、『よーい、どん』でお芝居を始めて、だんだんお芝居をしているという感覚がなくなって、『手が痛い』とか『暑い』とか『息ができない』とかを通り越して出てくる表情があるんですね。有村さんはそれをわかってくれているから、2分を超えたあたりから『これ来たな……』と思っていたと思います(苦笑)。カットがかかったときは、鼻まで煤で真っ黒でしたが、当時は小学生からみんな、当たり前にそれをやっていたんですね。せめて最初にこういうテイクがあってもいいんじゃないかと思ってやっていました」と、意図を明かし、それを理解した上で見事にやり切った有村への感謝と敬意を口にした。

 続いての映像は、柳楽優弥が演じる修が数式を延々と書き続けるシーンを紹介。黒崎監督は柳楽が劇中で着用しているメガネについて言及。「キャラクターを決めていく中でいろいろ試して決めました。このメガネに白衣の扮装をすると柳楽さんにスーッと役が降りてくる瞬間があるのを僕も感じていました」と語る。さらに柳楽へは「目がとてもよくて、鋭いけど優しいピュアな目をしていて、それを撮りたかった」と、この数式のシーンを入れた意図を明かしたが「申し訳ないことに、このシーンは撮影当日の朝、思いつきました」と、告白した。

 現場の物理監修の協力者に数式の作成をお願いし「ごめん、これ全部覚えて」と柳楽をはじめとする研究チームのメンバーに撮影直前に紙を渡したと明かし、客席は驚きに包まれていた。

 そして最後に紹介されたのが、三浦春馬さん演じる裕之と修、そして世津が久々に家で顔を合わせ、兄弟で食卓を囲むシーン。映像からは和気あいあいとした現場の雰囲気が伝わってくる。森プロデューサーは「柳楽さんと三浦さんはこの映画の中では腹違いの兄弟ですが、元々、2人は小さい頃からオーディションで会ったりして、お互いに知ってるんですね。この映画の中では、いい感じの兄弟でありながらライバル心もあったりする絶妙な関係性なんですが、それは日々、2人だけで構築していったものです。もっと2人を一緒に見たかったなって思います……」と、言葉を詰まらせる。

 このシーンについて話を振られた黒崎監督だが、涙で言葉が出てこず、その様子に客席からもすすり泣く方が見られるものに。そんななか浜野プロデューサーは「この作品の舞台になった夏もきっと暑かったと思います。周りでは人がいっぱい死んで、さらに原爆で大変な思いをしている人たちがたくさんいて……ということを主役の3人は一生懸命考えたんじゃないかと思います。それを監督がまとめていってこういう映画ができました。我々としてはそれをちゃんと未来に繋いでいく――いろんなことを考え、懸命に演じてくれた3人がいて、残してくれた作品があって、それを僕らが伝えて、観てくださる方々がいて、それをまた次の人に繋いでいくということになったらいいなと思って作った映画です」とあらためて本作に込めた想いを口にする。

 黒崎監督は言葉を詰まらせながら「このシーンは、和やかに見えて、実はすごい緊張感がありました。(裕之が)帰ってきて初めてご飯を食べているところで、どれくらいの温度感でやったらいいのかをみんなが探り合っているんですね。僕も、あの時の演出家としての緊張感はいまでも覚えているんですが、春馬くんが現場に振りまくエネルギーが毎回、こういう(明るい)感じで、それにすごく救われたし、役とピッタリなんですよね。映画の中で弟の裕之に兄貴が引っ張られていきますが、まさにその通りで、柳楽くんもそこに心地よく身を委ねて演じていたし、有村さんも2人の様子を静かに見ながらリアクションしていくという、いいコラボレーションが生まれた現場でした。『いい兄弟だなぁ……』と思いました」と、撮影の日々に思いを馳せていた。

 森プロデューサーは最後に「8月15日の終戦記念日ということで、先日、柳楽くんがすごく良い言葉を言っていて、僕もその言葉がずっと胸に突き刺さって、あらためて共有させていただきたいと思うのですが、8月6日の広島、9日の長崎……忘れちゃいけないことがあると思います。僕らはここに出てきたキャラクターたちをこうして作品に投影させたので、みなさんずっと覚えていってくださればと思います。そうすれば彼(三浦さん)の思いも報われると思うので……」と、声を詰まらせながら呼びかけ、会場は温かい拍手に包まれた。

 『映画 太陽の子』は公開中!

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 ※記事内画像は(c)2021 ELEVEN ARTS STUDIOS / 「太陽の子」フィルムパートナーズ

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