映画「ルックバック」で河合優実 初声優に迷いも「やってみるまで、答えは出ない」

映画「ルックバック」で河合優実 初声優に迷いも「やってみるまで、答えは出ない」1

 劇場アニメーション映画『ルックバック』(監督:押山清高/配給:エイベックス・ピクチャーズ)完成披露試写会が6月1日に開催され藤野役の河合優実、京本役の吉田美月喜、押山監督が登壇した。

 『チェンソーマン』で知られる漫画家・藤本タツキ氏の作品が原作。漫画へのひたむきな思いでつながった2人の少女を描く青春物語。しかしある日、すべてを打ち砕く事件が発生する……。

 押山監督によるとここ2ヶ月半会社に詰めて制作し、5月31日の夜に出来たという本作。
ついに人の目に触れることへ、河合は「藤野をやらせて頂いてよかったと思います。普段とは違って、できあがったキャラクターをリスペクトしながら力を入れさせて頂ける感じで。いまお見せできるのが嬉しいです」と笑みを見せる。吉田は「日々みなさまからのこの作品への期待とか愛をひしひしと感じているんです。ちょっと緊張している部分もあったんですが、観て頂けることをに安心する気もします」と、心境とともに「観たときに優実ちゃんから連絡が来て『すごい良かったよね』って来たんです。私もそう思ったので、みなさまにどう感じて頂けるか楽しみにしています」と、感想を心待ちにしている様子も窺わせた。

 原作の印象について。河合が「原作が公開されたときに読んでいたんです。藤本タツキ先生の物語を作る考え方とか、コマで静かに感動させるようなものがあって。そのときに藤本さんが考えていたこと、そのエネルギーが漫画にすごく乗っていると感じたんです。読んでいる方にダイレクトに届いているんだなって。話題になっている現象を観ている気分でしたね」と、感じ入ったそう。

 吉田は「『チェンソーマン』のアニメや原作の漫画はオーディション前に拝見したんです」という。それでも、「こういう漫画も描かれる方なんだって。印象に残っているシーンがあって、藤野が雨の中が走って、スキップみたいなことをしている絵とか、漫画でこの表情を切り取るんだって言うのに驚きました。その力を原作から感じました」と、感想を口にした。

 本作で声優初挑戦となった河合と吉田へやってみての印象も振られる。河合は「難しかったです。そして、オーディションで選んで頂いてすごく嬉しかったです。やりたいなと思えた作品だったんです。でも、声優というお仕事の技術がない自分に、何ができるんだろうってすごく考えました。それでもやってみるまで、答えは出ないと思って。アフレコ現場に行ってみて、スタッフのみなさんと、いままで自分が培ってきたものとか、感性を素直にキャラクターに吹き込むことができればそれで正解かなっていう思いで立っていました。全部精いっぱい頑張りました」。

 吉田は「プロの声優さんがアフレコで台本のページをめくるときに片手で音もなくされていると聞いて、形から入ったんです。でも結局、アフレコが始まると両手で持って必死にやっていました」とエピソードを披露した。

 そんな2人を見ながら押山監督は、「初めてという感じがしませんでした。プロの声優さんと何ら変わりないお仕事されていたと感じています」と、印象を語る。

 続けて押山監督は1人ずつの評価を話すこととなり、「河合さんは、普通にみんなが想像するような藤野の印象で、こういうのが藤野だよねというのがあるんです。けれど、そこからもう一歩踏み込んだニュアンスを含めるのが上手だと感じて。オーディションでいろんな方の声を聴きましたが、明らかに違っていました。明らかに輝いていたんです。声が本当に魅力的です」と称える。

 一方の吉田へは、「吉田さんは京本は秋田弁のなまりがあるんです。僕が表現させたいというので、初めてなのに、慣れない秋田弁をしゃべってもらうというので、準備を多くさせてしまうことになったんですけど、本番になったら完璧にやってくださっていて」と完成度の高さを。

 さらに、押山監督が「京本は口数が少ないんです。キャラクターの存在感とか際立たせるのが、京本の素朴な感じや飾らない感じ、引きこもっているバックボーンが物語の中で描かれているというものではないですが、吉田さんの声がめちゃくちゃハマっていて、ハマり役だなって。ネガティブというのが声の感じから感じたのと、喋り慣れていないというのをお芝居で表現されていたのが、体当りされている感じがして。オーディションの声からそれを感じられて、裸のままぶつかっていくというので、京本とそれが重なっていて、唯一無二の声だと感じました」というと、その京本のキャラクター性と自身を比べてみた吉田は「あながち間違ってないかも(笑)。オーディションで見つけて頂いて、ありがとうございます。不器用だけど、まっすぐにぶつかっていくことは大切にしていました。方言の部分でも、いろんな葛藤があったんですけど頑張ったので観てもらえればと思います」と、気持ちを語っていた。

 また、河合も自身と藤野を重ねて、「完成した作品を観たら自分の子供時代を思い出す感じだったんです。プライドが高いというか。自分が人よりできることにテングになりかけてへし折られるっていう。子どものときに身に覚えがあります。見えっ張りな感じとか、クラスのみんなとうまくやれる。社会性はあるけれど、そこが欠点でもあるというのを
自分の中に見れたなと思います」と、振り返っていた。

 ほかにも、作品にちなんで幼少に持っていた夢を語ることに。河合は「私は絵を描くのが好きで、こういうお仕事に付く前は美術方面に進もうとしていました。小学校のころには卒業アルバムにはグラフィックデザイナーって書いていました。CDとかのジャケットを描きたかったんです。でも、グラフィックデザイナーという格好いい響きにに惹かれていたんだと思います(笑)」と話せば、吉田は「可愛い服を着れたらいいなという不純な動機でモデルになりたいと思って。そのときに、母から『いまは勉強しなさい。あなたが表に出る仕事のチャンスがあるなら、いつかどこかであるからいまは勉強しなさい』って。そう言われた後はその夢を忘れて、テニス・バレエとか自分の夢を探すようなことをしていましたね」と、思い出と紐づけて話していた。

 そして河合から「心から素晴らしいアニメ映画で、押山清高監督という方の作品をこれからみなさんが発見していくことが楽しみです。公開はもう少し先ですが、感動したら周りに伝わえて頂ければ嬉しいなと思います」と、メッセージを寄せ、吉田は「描かれている2人の友情とか青春のキラメキって、どんな方にも刺さるものがあるんじゃないかと思うんです。そのなかで藤本先生が描かれた絵を映像で動かしています。なんといっても絵が素敵です。それをどう感じて頂けるか楽しみにしています」と話していた。

 その後、本編の上映が行われることに。エンドロールが終わった瞬間、観客たちは拍手で作品をたたえる。その拍手はしばらく続き、観客たちの感動の一端を窺わせるような光景が広がっていた。

 劇場アニメーション映画『ルックバック』は6月28日より全国公開予定!

 取材・撮影:水華舞 (C)エッジライン/ニュースラウンジ

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