歌舞伎俳優・市川染五郎主演で俳優・當真あみらが共演し2026年5月より上演予定の舞台『ハムレット』(演出:デヴィッド・ルヴォー)。本作とファッションデザイナー・中里唯馬氏がコラボレーションした染五郎のポートレートが11月28日に公開となった。
人間の苦悩を深く描いた傑作として長きにわたり愛されているシェイクスピアの四大悲劇の1つ『ハムレット』。葛藤・狂気・裏切りが複雑に絡み合い、観る者の心に深く突き刺さる普遍的なテーマが凝縮されている。父王の死と母の再婚に悩み苦しむ若き王子ハムレットを染五郎が演じる。ハムレットの恋人・オフィーリア役は當真がキャスティングされている。
公開された染五郎の撮り下ろしカットでは、ファッションデザイナーの中里唯馬(なかざ
とゆいま)氏がキービジュアルのためだけにデザインし、制作した唯一無二のクチュールをまとったもの。
中里氏は高校卒業後、単身ベルギーへ渡り、世界的なデザイナーを輩出するアントワープ王立芸術アカデミーを日本人最年少で卒業。その後、2009年に自身のブランド
「YUIMA NAKAZATO」を立ち上げ、独自のクリエーションを開始。2016年には、日本人としては森英恵氏以来史上2人目となる、パリ・オートクチュール・ファッションウィークの公式ゲストデザイナーに選出されている。
染五郎がまとう衣装へ中里氏は「東洋」と「西洋」、「繊細さ」と「強さ」、「女性的」と「男性的」といった、対立する要素を染五郎と「ハムレット」の中に見出し、衣裳で表現することを試みたという。繊細に揺れ動くハムレットの心象を「波」、復讐へと向かう強い意志を「炎」のイメージに託した。激しい炎に包まれるハムレットは、手作業により金属の鎖と繊細な糸を編み合わせた甲冑を纏い、強さの中にある脆さを表現。メイクアップでは、強靭な金属の甲冑が激しい戦いにより崩れていくような質感を肌や髪に加えることで、勇敢さとしなやかさを併せ持つ、立体的な人物像を描き出している。
ビジュアル撮影は、中里氏が自らカメラを手に持ち、染五郎氏と対話を重ねながら行われました。ロケーションには、相模湾の壮大な風景を望む場所が選ばれ、復讐の炎を宿す強いハムレットの姿を撮影。また夕暮れの海岸では静穏な波が広がるプリミティブな空間の中で、憂いを帯びたハムレットの表情が切り取られている。今後この撮り下ろしカットはフライヤーなどのキービジュアルに使用される予定としている。
このコラボレーションへ中里氏と染五郎からコメントが寄せられた。以下全文。
●中里唯馬氏 コメント
デンマーク発祥の西洋の物語であるハムレットを、歌舞伎役者である市川染五郎さんが演じる時、そこにはどんな衣服と背景が必要かを考えた先に見えたものは、西洋的でも東洋的でもない衣服を纏い、沈みゆく太陽を背
に海に立ちすくむ姿でした。
絶え間なく続く人類の戦いの歴史。しかし、染五郎さん演じるハムレットは、どこか違う道を示してくれるのではないか、そんな希望をカメラのファインダーを覗きながら感じました。
●市川染五郎 コメント
衣裳とロケーションとが見事に調和しており、身につけていても、海や自然と一体化していくような感覚を覚えました。
波の動きや天気の移り変わりが、さまざまな葛藤を抱えめまぐるしく揺れ動いていくハムレットの心情と重なり、本番に向けてインスピレーションをいただいた、刺激的な時間でした。
舞台『ハムレット』東京公演は2026年5月に日生劇場にて、大阪公演は2026年6月にSkyシアターMBSにて、ほか愛知公演を予定している。
※中里氏が制作する衣裳は、市川染五郎のキービジュアル用のみに限る
※記事内写真クレジット「キービジュアル衣裳デザイン・フォトグラフィー(市川染五郎):中里唯馬」


