音楽家・原摩利彦氏が9月2日に大阪市内で開催された『京都芸術大学 開学50周年記者発表会』に出席した。
京都芸術大学が2027年に50周年を迎える。これを機に次の50年に向けた大学の使命・行動指針とリブランディングを発表するというもので、その象徴となる創造拠点『Sakamoto Ryuichi Lab at KUA』(仮称)構想を始動させることとなった。同拠点では坂本さんの思想や功績を次世代につなぎ、新たな表現や創作につなげる場として、スタジオ/ラウンジ/アーカイブの3つの機能を設ける予定。国内外のアーティストや学生が集い、新たな創造を生み出す、世界に開かれた拠点を目指していく。原氏は本構想における一人目のStudio Lead Artistとなったことからゲストとなった。
副学長を務める小山薫堂氏、株式会社ASの青木淳氏、同社の品川雅俊氏、原氏によるトークセッションを開催。
原氏は坂本さんとの思い出として、「僕が音楽家を目指したきっかけは、1996年に大阪のフェスティバルホールでの『Trio World tour 1996』で初めて生で坂本さんの音楽を聴いたことで目指したんです。それから30周年が2026年で御縁を感じています」としみじみ。
生前にも坂本さんと会い、「坂本さんは凄い優しかったですし、厳しさも共存していると感じていました。その根底には深い愛情があったと思います。それは人だけではなく、環境・テクノロジー・地球と幅広く、だからこそああいう音楽が作れて、聴いている人たちは追いかけて凄いなと感じるんだと思います」と、自身の分析も明かした。
『Sakamoto Ryuichi Lab at KUA』(仮称)には坂本さんの使用した機材や資料などがそろいそれを利用してアーティストと音楽をはじめとした共同制作が可能になる予定であることが明かされたが、原氏は「やっぱり教育の場に坂本さんの持っていらっしゃた機材がたくさん集まるということで、学生さんらと一緒に考えながら音楽を作っていきたい」と話す。
さらに、「学生たちと一緒に音楽を作るにしても、“こういうふうに作ったらいい”と教える立場ではなく、一緒に坂本さんが遺された機材や作品を見て、世界に対してどう考えて音楽を作ったかということを一緒に考える場にしたいです。たまたまリードアーティストとして参加していますが、坂本さんが『コモンズ』と名付けられていたとおり絶対囲いこもことなくいろんなアーティストともに広げ作っていければと思います。レコードとかも展示されると思いますし、実際に聴けると思います」と思いを馳せていた。
また、原氏といえば、2024年に公開され大ヒットとなった映画『国宝』の音楽をはじめ、さまざまな映画の劇伴を手掛けていることでも知られている。それだけに原氏は、『Sakamoto Ryuichi Lab at KUA』(仮称)での楽曲制作へは、「映画の音楽を作る時に、後ろに監督がいて、睨まれながら……じゃないですけど作っていくんです(笑)。アーティストは嫌がるかもしれないですけど、実際に作っていて我を忘れる瞬間があるんです。できれば、そういうアーティストに来てもらって1時間ではなく、3、4時間かもしれないですけど、学生も一緒に見てもらって、音楽が生まれる瞬間を一緒に見て共有してもらえれば」と、制作の面白さを伝えたいという。
『Sakamoto Ryuichi Lab at KUA』(仮称)については、「坂本さんの機材などは貴重で、ファンやマニアからしたらたまらないものがあると思いますが、もっと大きなビジョンを見据えた先に世界へ挑戦とか、クリエティビティとか、他者を思いやる気持ちにつながって、それがクリエイティビティにつながっていくと思いますので、自分もその場にかかわって、みなさんとやっていきたいと思っています」と、あらためてコメントを寄せた。
その後、会場では原氏と東北ユースオーケストラにてセッションが行われ、今年10月16日公開予定の西川美和監督がメガホンをとる『わたしの知らない子どもたち』(配給:K2 Pictures)のテーマソング『大洋と子どもたち』をショートバージョンで披露。同楽曲は原氏と東北ユースオーケストラが担当しており、東北ユースオーケストラは同曲を収録したときのメンバーであることも明かされる。
ほかにも坂本さんの楽曲『Aqua』、原氏と蓮沼執太氏によるセッション、坂本さんの『Kizuna world』を全員で生演奏。原氏は「坂本さんのレガシーを受け継ぐのは誰か一人だけではなく、多くの形で引き継いで行くものではないかと感じています」と自身の感じたことを話していた。
取材・撮影:水華舞 (C)エッジライン/ニュースラウンジ






