俳優・妻夫木聡、広瀬すずが6月8日に沖縄・那覇市立那覇中学校で映画『宝島』(監督:大友啓史/配給:東映 ソニー・ピクチャーズ)沖縄キャラバン第二弾!トクベツ交流会を大友啓史監督とともに開いた。
作家・真藤順丈氏が戦後沖縄を舞台に、史実に記されない真実を描いた作品で第160回直木賞をはじめ、第9回山田風太郎賞、第5回沖縄書店大賞を受賞している作品。沖縄がアメリカだった時代が舞台。米軍基地から奪った物資を住民らに分け与える“戦果アギヤー”と呼ばれる若者たちがおり、「でっかい戦果」を上げることを夢見る幼馴染のグスク(妻夫木聡)、ヤマコ(広瀬すず)、レイ(窪田正孝)のその後までが描かれる。実際に起きた事件を背景に物語が進行、当時の状況を徹底的に調べ尽くし、リアルな沖縄を再現している。
以下、公式レポート部分。
交流会では、事前に映画を鑑賞した生徒たちが妻夫木、広瀬、大友らに直接質問する「質問コーナー」や、キャストから子供たちに質問するなど、温かく時に熱い想いを交わす時間が生まれた。
TVの取材と聞いて集まった子供たちだったが、MCの呼び込みで本人たちがサプライズ登壇すると、驚きを隠せず、思わず声を上げる生徒たち。子供たちと話すことを楽しみにしていた大友、妻夫木、広瀬も、生徒たちを前に笑顔を見せながら登壇した。
まずは、MCの「映画見た人手をあげてください」という問いかけに、昨日のプレミア試写に招待された約20名が挙手し、さらに「映画が面白かった人は?」という問いには、鑑賞した生徒全員が力強く手を上げ、それを見た3人は嬉しそうな表情でお互い顔を見合わせた。そんな中、妻夫木は、「今日サプライズってことすっかり忘れてて、昨日のプレミア会場で名刺を渡した際に那覇中の子供だとわかったから、「明日ねー」と言ってしまった」と冒頭からお詫びし、場を和ませた。
さらにMCから「アメリカ統治下、戦果アギヤーなどについて聞いたことがある人」という質問に、映画を見た人、観てない人も積極的に手をあげ、次第に緊張も解け子供たちは皆、交流会を楽しんでいる様子が見てとれた。また、子供たちは、両親や祖父母から聞いていたアメリカ統治下への思いや、映画見るまで知らなかった戦果アギヤーという存在について語り、話だけでしか聞いてなかった歴史的事実が映画になることで、極限状態の中でそうせざるを得なかった理不尽な思いや感情まで受け取れ、ただの事件ではなく日本にとっても大きな事件であること。また、今の恵まれた立場からそういうことを知ることの大切さ、伝えることの重要さについて語る子供たちの姿に、登壇者は皆感心を通り越した尊敬と驚きの眼差しで、子供たちが堂々と答える姿を暖かい目で見つめながら交流会は進行した。
妻夫木から子供たちへ、「知らない時代を描いた作品だが、時代の変化をどう感じましたか?自分達の未来がどうあるべきか?」という質問を投げかけた。それに対して、生徒から「自分達は生まれた時から当たり前に米軍基地があって、映画の中では当たり前ではなく、米軍に反発していたことを知り、戦争の憎しみとか悲しみが風化しつつあることを知り、これからの未来を作る若い世代がこういうことを知り、映画を見て実際にどんなことがあったかを知り、これからどうするべきかを考えることが大事だと思う」という素晴らしい回答が出たことに、3人とも顔を見合わせて頷き合う一幕もあった。また東京から移住してきたという生徒は、「引っ越してきて沖縄の人たちの熱い思いに触れていたが、その理由がこういう背景があったからだと知ることができ、こういう先人たちの大切な想いをどうやって次につないでいくかも考えていかなければいけない」と、しっかりと思いを語っていた。
さらに妻夫木は、「映画に出たきた人と私たちを比べると、どちらが幸せか?」と少し難しい質問を問いかげるが、それについても積極的に手があがり、今の時代の方がもちろん資源も豊かで幸せだと思うが、過去にあった大切な思いを残していくことも大切であることや、大変な状況ではあったと思うが、アメリカに負けないという一致団結する強い気持ちを持った当時の熱い思いを考えると、単純にどっちが幸せなのか?簡単には判断できないなど、様々な意見が出てきた。それを受けて妻夫木は「基地があるから生きていけた人もいる。ただの憎しみだけじゃないと思う」と、当時のことを取材した経験を語る。「実際当時を知る人は、怒りだけじゃなかったと言っていた。アメリカに対して怒りを持った人もいたけど、アメリカがいるからこそ生きれた人もいたと思う、幸せの価値観はとても難しい。何が正義なのかわからない時代なので、私たちは先人たちの思いを胸に生きていかなければならない。過去に戦った人がいたからこそ、今がある。そういう思いが届いていたら嬉しいなと思って、あえて難しい質問させてもらった」と、思いを明かした。
また、生徒たちから登壇した3人への質問にも、積極的に手が上がり、盛り上がった。
大友へ「沖縄の忘れてはいけない大切な物語はなんだと思いますか?」という質問に対して大友は、「ちゅらさん」から長く沖縄のことを考えてきた話や、一人一人価値観が違うことを語り、「映画としてメッセージを押し付けるようなことはしたくないと思った。「宝の島」の、この宝は何なのか?ということを皆さんの言葉で考えてもらいたいと思って作った」「この時代の人たちが、何を大切にしてきたのかを知ることは、何か参考になると思ったし、考えるきっかけになったら良いと思った。一人一人の宝が何なのか?を考えるきっかけになったら良いな」など、どういう思いで本作を作ったかを、明かした。
続いて広瀬へ「演技力について、どうやってそこまで入り込める演技ができるのか?」という質問があがり、広瀬は「こんな大先輩の前で語ることは難しい」と恥かしそうに妻夫木を振り返りながらも、「役を演じるにあたり知らなかったことが多く、これが受け継がれていくために、映画というコンテンツを使って伝えていきたいと思いながら演じた。そして、また、その中で自分の中で生まれたものを大切に演じた」と、真摯に答えた。
続いて「さまざまな方言が出てきますが、難しかった言葉、残したいなと思った言葉は?」という妻夫木への質問に対し、感情を入れていくとアクセントが変わってしまうことがある難しさを語り、一番心に響いたセリフは「打ち返したら戦争じゃあらに」という永山瑛太が演じたオンのセリフをあげ、「じゃあどうすれば良い?というのはわからないけど、これを考えるのが日本の未来につながるのではないか」と熱く語った。
あっという間に時間が過ぎ、3人から締めの挨拶をもらう時間になり、はじめに広瀬は、「皆さんの素敵な言葉とまっすぐな目で見た作品の感想や、疑問を生の声で聞けたことに、今までの苦労が報われたこと」とお礼の気持ちを伝えた。続いて妻夫木は、「地元の子どもたちと議論できるのがすごく楽しいし、素直な気持ちに触れて本当に嬉しかった。過去を描くことが未来への問いかけになる、と思って作ってきた。そして死は終わりではなく、先人たちの想いは胸に刻まれている。僕たちはその想いを受けて精一杯生きていかなくてはいけないし、これからどう生きるべきなのか、お互いに手と手を取り合って考えていくきっかけになるような映画になったら嬉しい」と、熱い想いを改めて伝えた。
最後に大友は「アメリカの統治された時代の物語だが、その時代を生きた人がどういうことを考え生きたのか?を調べて感じたことを伝えようと思って作った。この作品を観ていろんなことを感じて、もしこの想いを伝えたいと思ってくれたなら、ぜひ広めてほしい。この作品に込めたメッセージを沖縄にとどまらず、日本全国、そして世界へ届けたいと語り、今日の子供たちの言葉に勇気づけられた」と感謝の言葉を贈った。
最後に、参加した生徒全員と並んで記念撮影をし特別交流会は終了したが、そこでさらにサプライズが用意されており、“宣伝アンバサダー”妻夫木による、名刺配布会が急遽行われた。名刺を渡し握手を交わすなどして、さらに子供たちからエネルギーを受け取った様子の妻夫木は、生徒たちとハグも交わすなど名残惜しそうに最後まで、熱い交流を交わしていた。
※記事内写真は(c)真藤順丈/講談社 (c)2025「宝島」製作委員会