高島礼子 長崎のエキストラらに触発で「教わったこと」をしみじみ……黒谷友香 映画「祈り」オファーを受け「責任を全うしたい」

高島礼子 長崎のエキストラらに触発で「教わったこと」をしみじみ……黒谷友香 映画「祈り」オファーを受け「責任を全うしたい」3

 俳優・高島礼子、黒谷友香、城之内正明が4日、東京・早稲田奉仕園 スコットホールで映画『祈り ―幻に長崎を想う刻―』(監督:松村克弥/配給:ラビットハウス)公開直前イベントを松村監督、カトリック東京大司教区司祭の伊藤淳神父とともに開いた。

 1945年8月9日11時2分に広島に継ぐ2発目の原子力爆弾が長崎市に落ち、約7万4000人もの命が一瞬にして奪われた。東洋一の大聖堂とうたわれた浦上天主堂も被爆し、外壁の一部が崩壊。そしてその12年後となる1957年、その浦上天主堂跡から被爆したマリア像を盗み出そうとするカトリック信徒がいた……。その信徒となる鹿(高島)と、忍(黒谷)の2人の女性を描いた作品となっている。

 イベント冒頭では、高島、黒谷、城之内は聖書の一節をそれぞれ朗読。高島は作品へ「2度と戦争のない世界になるために、長崎の被爆者たちの想いを込めて、一生懸命頑張らせて頂きました」と、想いを。。

 作品のオファーが来たときのことへ、高島は「いままで教科書で読んでも知りえなかった現実が描かれていて、ビックリしていました。知らなかったんです……戦後これほどまでに被爆者らが、後遺症とか差別とかでその後まだ戦争は続いていたということを、知らなかったということで、恥ずかしかったし申し訳ないという気持ちで演じていました。この作品に出会えたことで、当事者となってメッセージが送れる芝居をしたいなと思いました」と、強く気持ちを持ったそうだ。

 そんな思いを持って演じた鹿という役。演じてみて感じたことは「戦争って人の気持を壊しますよね。鹿はどうしてこんなに強く生きられたのかというのは信仰があったからだろうなと感じました。鹿は看護師、売春婦といろんな顔を持っていて、そのなかで被爆者という現実、なおかつ、みんなを率いて、マリア像を守ろうとするする精神力はどこから来るのかなって演じながらずっと考えていたんですけど、考えてみたら結果、彼女の信仰心。それをつくづく感じました。強い意志、何かを信じることというのは鹿の強い思いだったのかなって」と、高島なりの答えを。

 一方、黒谷は「最初に台本を読ませて頂いたときに難しいなという感想を持ちました。テーマは重いものですけど、いまこのような内容の作品に出演させて頂いて、世界に向けてお伝えできるという幸せを噛み締めながら、責任を全うしたいなと思って演じました」といい、役作りとして本作はかつて戯曲化もされていることから「戯曲も読ませて頂きましたが、台本を読みながら戯曲をヒントに世界観を膨らますヒントとさせて頂いて役を膨らませていきました」と、すり合わせて行ったという。

 さらに、黒谷は前日3日に、浦上天主堂を訪れたといい、「長崎の平和公園と、原爆落下中心碑、資料館と浦上天主堂にお伺いしました。撮影中にも行きましたが、役から離れて私本人として伺ったときに、日本人として世界に伝えていかなければ行けない場所だとあらためて感じました」と、気持ちも新たになったと話していた。

 また、撮影中、高島は被爆者たちを演じた現地のエキストラの方々の演技に「変な芝居をしてはいけない、気合を入れてやらないと」と圧倒されたという。「本当に何回も被爆するシーンで泣いてくださったんです。すごいなと思ったんですけど、一瞬負けてられないなと思ったんです。エキストラの方たちはお父様とかお母様、おばあちゃま、おじいちゃまから被爆の状況のお話を聴いていると思うんです。だからたぶん自然と涙が溢れ出てくるというという気持ちだと思って。でも、私なんかは芝居というところで涙を流している。計算をして感情を込めるのではなくて、ちゃんとその人達の想いになって泣ける、芝居ができるというようなことを教わった気がします」と、背筋が伸びる思いだったという。なお、「この作品に限らず、現地の方のエキストラさんから学ぶことが多いです」とも語っていた。

 イベントではほかにも主題歌『祈り』を担当した歌手・さだまさしがVTRでメッセージを寄せエールを送る中、城之内から「柄本明さんが演じている役のセリフで、『もう忘れたいのに』というセリフがあるのですが、それを聞いたときに、僕自身が思ったんです。つらいことがあったときに忘れたいという思いは当然ですけど、僕たちの世代は忘れちゃいけないんだよなと思いました。教科書のただの元号になっちゃいけないなと感じています」といい、黒谷は、「この映画にかかわることができて幸せでした。1人でも多くの方に観て頂きたいですが、現在オリンピック中で、世界中が日本に注目していると思いますので、8月の日本で何があったのかを感じてもらえればと感じています」と、コメント。

 そして高島からは「いいセリフがたくさんあるんです。私は田辺誠一くんの『原爆が悪いわけじゃない、戦争が悪いんだ』というセリフがあって、本当にそのとおりで2度と戦争の起こらない世の中になるように。これから、メッセージが伝わるように、この作品がみなさんに影響されるようにと思っています」と、メッセージを寄せていた。

 映画『祈り ―幻に長崎を想う刻―』は13日よりユナイテッド・シネマ長崎にて先行公開され20日よりシネ・リーブル池袋ほか全国順次公開予定。

高島礼子 長崎のエキストラらに触発で「教わったこと」をしみじみ……黒谷友香 映画「祈り」オファーを受け「責任を全うしたい」2

高島礼子 長崎のエキストラらに触発で「教わったこと」をしみじみ……黒谷友香 映画「祈り」オファーを受け「責任を全うしたい」1

聖書の一節を朗読する