石丸幹二、井上芳雄、安蘭けい「ラグタイム」会見!「分断だけではなく喜びを」

石丸幹二、井上芳雄、安蘭けい「ラグタイム」会見!「分断だけではなく喜びを」3

 俳優・石丸幹二、井上芳雄、安蘭けいが24日、都内ホテルで日生劇場9月公演 ミュージカル『ラグタイム』(演出:藤田俊太郎)製作会見を演出の藤田氏とともに開催した。

 20世紀初頭のニューヨークが舞台。ユダヤ人、黒人、白人。それぞれのルーツをもつ3つの家族が固い絆で結ばれ、差別や偏見に満ちた世界を変えていこうとする物語となる。

 石丸は娘の未来のためにラトビアから移民としてアメリカにやってきたユダヤ人のターテ役を演じる。1998、99年ごろに本作を鑑賞したことがあるそうでそのときから「かかわりたいと思って約四半世紀。大変興奮しました」と胸に抱いていたという。続けて、「当時『ライオンキング』など、いくつかの名作が上演されている黄金期のときでした。自分が浴びたことのないものを浴びて、そのときに唯一、この作品だけは出てみたいと思ったんです。よくよく見るとアメリカの歴史の物語ですし人種によって起こることが描かれています。ですが、外国人である私達が、心が動いていくんです。ターテをどのように演じられるのか、けいこをしている途中です」と、自身の感じたことを伝えた。

 新しい音楽“ラグタイム”を奏で、新時代の到来を目指す黒人ピアニストのコールハウス・ウォーカー・Jr.役を演じる井上。石丸と同じく本作を鑑賞したときに「どんな形でもいから関わりたいと思ってここにいます」と、並々ならぬ熱を持っていたそうで、「いまの日本で僕たちでやる意味がたくさんあるはずです。それをけいこでたくさん見つけて、みなさまに共有できたら」と、意気込む。

 とはいえ、現在『ムーラン・ルージュ!ザ・ミュージカル』に出演しており、多忙を極めるなかで本作は9月上演ということで、「歌舞伎俳優なみの過密スケジュールになっていて(苦笑)。演じる役は主要な役の3分の1なのでと甘い考えでけいこに突入したらすごく重要な役回りでこの夏は燃え尽きるんじゃないかと思って、日々本番のけいこをしています」と、とにかく大変な様子も。

 正義感にあふれ人種の偏見を持たない、裕福な白人家庭の母親のマザー役を演じる安蘭。「きっと女優なら誰もがやりたいだろうという役です。(脚本を読んで)とりつくようにやらせてくださいと言いました」と、身を乗り出したくなるような素晴らしいものを感じたそうだ。

 キャスト3人が待ち望んでいたように、藤田氏も本作の話が来たときに、「演劇にかかわっていると震えるような瞬間があるんです。この作品の話をいただいと時にも震えるような思いでした。この作品を自分が演出できるんだと」と、当時の心境を振り返る。その藤田氏の気持ちに呼応するようにスタッフたちも「準備に至るまでのスタッフのあまりの熱量に、また震えています。音楽や戯曲、台本の言葉だったりこの作品に参加できると言うだことに震えています。なかなかこんなに興奮できることがあるのかと感じています」と、熱意に満ち溢れている制作現場のことを話していた。

石丸幹二、井上芳雄、安蘭けい「ラグタイム」会見!「分断だけではなく喜びを」4

 本作の演出としては井上が藤田氏へ「人種の違いを描くのがテーマですけど、本来と肌の色と外見の変化ではやらないんですよね?」と問いかけると、藤田氏は「役者の外見の変化ではつけません」といい、着ている服やそれぞれの人種にあわせた身体表現などで見せていくとしていた。

 そして安蘭から「けいこ真っ最中です。多様化とうたわれている時代ですが、そこには人種差別、区別がある中なので少しずつこの作品を観てあらためて、観てくださった方々がもう一度考え直せる機会になればいいなと思っています」と期待を込めると、井上も「ターテが見る夢は理想郷かもしれません。けれど、そのイメージをしっかり持って進んでいかないと大変なことになるんじゃないかと感じられる大切な作品です」。

 石丸からは、「ターテという役はチャップリンとかぶるんです。100年くらい前に起きた出来事ですが、身近に感じています。AIが席巻してきていて、乗り越えなくてはいけない状況で夢を持って戦うことを提示してくれるんです。社会派ミュージカルだと思います。そのあたりもご期待ください」と、メッセージを寄せると、藤田氏から「他社と分断してしまう瞬間や事実を描いていますが、それ以上に音楽の喜びや、ものを一緒に作ること、ターテは映画監督なので向こう側に観客が居るんです。それがシンクロしていくということが着地点になっていきます。分断だけではなく、喜びをこのカンパニーで作れることを嬉しく思います」と、胸いっぱいのコメントを寄せていた。

 ミュージカル『ラグタイム』東京公演は9月9日から同30日まで日生劇場にて、大阪公演は10月5日から同8日まで梅田芸術劇場 メインホールにて、愛知公演は10月14、15日に愛知芸術劇場 大ホールにて上演予定!

 ※同会見でキャスト陣のプライベートなどにも迫った記事はこちら(井上芳雄 石丸幹二に憧れで「ネタではなく」やったこととは?

 ■キャスト
 石丸幹二/ターテ
 井上芳雄/コールハウス・ウォーカー・Jr
 安蘭けい/マザー
 遥海/サラ
 川口竜也/ファーザー
 東 啓介/ヤンガーブラザー
 土井ケイト/エマ・ゴールドマン
 綺咲愛里/イヴリン・ネズビット
 舘形比呂一/ハリー・フーディーニ
 畠中 洋/ヘンリー・フォード&グランドファーザー
 EXILE NESMITH/ブッカー・T・ワシントン

 新川將人 塚本 直 木暮真一郎
 井上一馬、井上真由子、尾関晃輔、小西のりゆき、斎藤准一郎、Sarry、中嶋紗希
 原田真絢、般若愛実、藤咲みどり、古川隼大、水島 渓、水野貴以、山野靖博

 大槻英翔 村山董絃/リトルボーイ(W キャスト)
 生田志守葉 嘉村咲良/リトルガール(W キャスト)
 平山正剛 船橋碧士/リトルコールハウス(W キャスト)

 ■あらすじ
 ユダヤ人のターテ(石丸幹二)は、娘の未来のために移民となり、遠くラトビアからニューヨークにやってきた。黒人のコールハウス・ウォーカー・Jr.(井上芳雄)は才能あふれるピアニスト。恋人のサラ(遥海)は彼に愛想をつかし、二人の間に生まれた赤ん坊を、ある家の庭に置き去りにしてしまう。赤ん坊が置き去りにされたのは、裕福な白人家庭の母親 マザー(安蘭けい)の家だった。偏見を持たず、正義感にあふれるマザーは、夫のファーザー(川口竜也)が長く家を不在にしている中、赤ん坊を拾い上げ家に迎え入れる。マザーの弟であるヤンガーブラザー(東 啓介)は生きがいをもとめる不器用な若者。アメリカ中の注目の的である美人女優のイヴリン・ネズビット(綺咲愛里)に愛の告白をするが、イヴリンは公衆の面前で彼にキスをしておきながら、その後すぐに軽く拒絶する。

 ターテと娘はニューヨークに着いてから貧しい生活が続いていた。やがて同胞の女性アナーキストであるエマ・ゴールドマン(土井ケイト)、奇術師にして“脱出王”の名をとどろかせていた、ハリー・フーディーニ(舘形比呂一)と縁を結ぶことになる。

 サラの愛を取り戻すため、マザーの家に身を寄せる彼女の元に通い詰めるコールハウスは、今や“ラグタイム”を奏でるピアニストとして世間で注目され始めていた。ヘンリー・フォード(畠中 洋)が世に送り出したT型フォードを買うことができるくらいまで稼げるようになったが、黒人を蔑視する白人たちに車を破壊されてしまう。そんな中、教育者、作家として啓蒙活動を行う、ブッカー・T・ワシントン(EXILE NESMITH)
のように、社会に影響を与える黒人も現れ始めていた。

 自らの正義と、生まれたばかりの息子の未来を守るため、差別に立ち向かおうとするコールハウスではあったが……。

石丸幹二、井上芳雄、安蘭けい「ラグタイム」会見!「分断だけではなく喜びを」1

石丸幹二、井上芳雄、安蘭けい「ラグタイム」会見!「分断だけではなく喜びを」4