俳優・吉沢亮が11月17日に東京・新宿ピカデリーで主演映画『ぼくが生きてる、ふたつの世界』(監督:呉美保/配給:GAGA)ロングラン上映御礼舞台あいさつを呉監督とともに開いた。
作家・エッセイストの五十嵐大氏の自伝的エッセイ『ろうの両親から生まれたぼくが聴こえる世界と聴こえない世界を行き来して考えた30のこと』が原作。脚本は『ゴールド・ボーイ』、『正欲』などを手掛ける港岳彦氏が担当している。耳のきこえない両親の元で育った息子・五十嵐大(吉沢)の心の軌跡を描いている。9月20日より公開され、約2ヶ月にわたってロングランとなり約12万人を動員している。
本作では手話で会話をするシーンも多数あり、その手話を学ぶ過程について質問が飛ぶ。「撮影現場にインする2ヶ月前からいろいろ教えてもらいながら、やっていきました。けいこの日は監督は必ず、いらっしゃってずっと一緒に見てくださっていたんです。手話の稽古をしつつお芝居を固めながらやれたのが心強かったです。大変な日々ではありましたけど楽しい時間でもありました」と、振り返る。この手話の練習シーンを撮影したものもSNSで公開したそうだが、その再生回数の伸びが良かったそうで呉監督は「助監督が『YouTuberになったような気分ですよ』と言ってました(笑)。それくらい練習してくれたんだって思って」と、目を細めた。
トーク後半には事前に観客たちから集められた質問に答えていくコーナーを開催。1問目は自身のイチオシシーン。吉沢は「ありすぎてどれだろうって感じです」と、苦笑いしつつ、そのなかでも「見た感じで好きだったのはお母さんとパスタ食べているシーンですかね。お母さんと大の今までの積み上げてきた距離感というかが出ている気がして。二十歳という設定でのシーンなのですが、その時期って(親と)1番溝が生まれている時期じゃないですか。いままでの関係性から全てから開放された瞬間で、ただただ親子になっているシーンで、観ていてすごくグッと来るものがありました。そこは、個人的に1番大変だった手話のシーンだったんです。どのシーンもそうですけど、特にあのシーンはテンポ感も含め練習したシーンで、それがいい感じに出ているシーンだったので良かったんって思いました」と、撮影の苦労とともにコメントが。呉監督もそのシーンは「見ていてそうそうそう!と思いながらで」と、納得のシーンだったという。
ちなみに、呉監督のお気に入りというか「唯一泣けるシーンがあって」というシーンがあるという。そのシーンは、ほかのスタッフからは共感が得られなかったそうだが、大が面接を受けて帰るときの背中なのだそうで、それが自身の家族がそういうことになったらと想像したからだそう。そのシーンの吉沢の演技が「うまかったですよ。ニヤニヤしながら帰っているのもあって」と呉監督が褒めると、吉沢は「あのちょっとバカさ加減が理解できるなーって思って。若い頃オーディションで、『映画とか好きなの?』『役者さんは誰が好き?』と聞かれて、“ディカプリオ好きです”と言ったら、観てない作品のことをあげられて、深堀りされると知らないという状況でも、“でも好き!”と、言っちゃうというのは割とすんなりやれたシーンです」と、自身として感情が入ったそうだ。
続けて2問目は好きな手話の表現。こちらは吉沢は「もう1年ほど前なのでだいぶ忘れてしまってはいるのですが、“なるほど”とか“納得”という手話は好きです」と表現していた。
3問目は昭和、平成の時代が入っている本作の時代感の表現や服装髪型をあわせ方をどうしたかというもの。これに呉監督は「前半は色をカラフルにしていて、後半は色を抜いてブルートーンにしているんです。そういう昭和のカラフルな写真とか観ても、なんだかそういう雰囲気を感じていたので」と、工夫をしていることを明かす。
吉沢は、ロン毛のカツラをかぶったことに一抹の不安を覚えたそう。「僕は逆に昭和を知らない世代なので、ロン毛のカツラを被ったときに“これ成立してます?”“大丈夫ですよね?”という不安は、正直ありました。でも、完成したものを観て、まあ大丈夫だろって」と、自分の中でOKを出した思い出を。そのシーンへ呉監督は「ポテンシャルがあるのになんだかなぁ感を出したかったんです」と笑いながら説明していた。
映画『ぼくが生きてる、ふたつの世界』は公開中!
※別記事
・吉沢亮主演「ぼくが生きてる、ふたつの世界」2ヶ月ロングランで「本当に嬉しいなぁ」
取材・撮影:水華舞 (C)エッジライン/ニュースラウンジ