東出昌大 映画「Winny」へ願い……金子勇役作りへ「自分には芝居しか無い」

東出昌大 映画「Winny」へ願い……金子勇演じ「自分には芝居しか無い」1

 俳優・東出昌大(36)、三浦貴大(37)、和田正人(43)が11日、東京・TOHOシネマズ六本木ヒルズで映画『Winny』(監督:松本優作/配給:日活)公開記念舞台あいさつを松本監督(31)とともに開いた。

 2002年に開発され、簡単にファイルを共有できるソフト『Winny』。本人同士が直接データのやりとりができるシステムで、爆発的にシェアを伸ばしたが、その裏で大量の映画やゲーム、音楽などが違法アップロードされ、ダウンロードする若者も続出、次第に社会問題にも発展した。本作では、04年に逮捕された開発者・金子勇(東出)の『Winny』開発の経緯や、逮捕の不当性を主張しサイバー犯罪に詳しい弁護士・壇俊光(三浦)らとともに、裁判に臨む姿が当時の時代背景を交えて、そのてん末まで描かれる。

 実在した金子氏を演じて感じたことへ東出は「生前の金子さんを知る方で悪く言う方はいなくて、ご自身も悪く言ったり愚痴を言ったということが少ない方と聞いていました。こんな素晴らしい、心が綺麗で純真無垢な人物を演じられということは自分に割り振られた役のなかでは特別でした。金子さんという方がいて名誉でした」と、感じたことを。

 その役作りとして「愚痴らないようにしようとか金子さんの浮遊感というかポジティブな感じを心がけていました。自分を表現する方法がプログラミングという金子さんになるんだったら、自分には芝居しか無いと思って没入して。それしか無いんじゃないかなと思っていました」と演技に正面から向き合ったそうだ。

 東出は続け、「壇先生、弁護団の方々、金子さんのお姉さまにお話をうかがって、人物像を作ったんです。ただ、金子さんをどういう風に見てほしい、お客さんへ印象を操作したいというわけではなく、裁判記録などを見て、金子勇になれば、絶対に金子勇の魅力が届くから。それだけを考えて、漠然としているようで針の穴を通すような話であると思いましたけど、金子勇になればいい映画になるのではないかと思いました」と、語った。

 三浦は「思い出に残っていて、僕の役者人生の中でも大切な作品です。壇さんご本人からお話を聞けるというのも貴重な機会で」と、噛みしめるように話すとともに、東出との共演へ「いまは背筋がピンと伸びていますが、動きとか猫背の姿勢とか、金子さんでいてくれたから壇さんを演じられました」と、たたえる。すると「僕と正反対の方で、壇先生が三浦さんだったからこそでした。僕は突っ走るだけで、本当にありがとうございました」と、2人でお辞儀しあった。

 松本監督からは本作を作るにあたって、「公開できるかわからない、撮影に進めるかわからないという状況でした」といい、制作が始まった当時は公開は単館のみではないかといわれるほどだったそう。そんな本作を作るにあたり気をつけたことへ「映画の中に出てくる方たちは、いまも社会の中で生活されていて、それで映画によって生活が変わってしまうのではないかというところは慎重にやりました。完成させたいなと思ったのは金子さんのことをドンドン知っていたことが作りたいと思いました。有罪となったときは大々的には報じられますが、無罪では、小さく報じられていて、いまだに有罪だったと思っている方がいると思って。そういうところで金子さんのことをみなさんに知って頂きたいなと思いました」と、話していた。

 最後に和田から「当時を知らないであろう若い方の感想を見まして、金子さんが天国からどう見ているんだろうなって。いたずらっ子ような笑顔でしめしめと見てるのではないかと。天才の手のひらの上で転がされる感じを味わってもらえれば」とアピール。

 三浦は、「壇さんが金子さんに思っている気持ちを大事に演じたつもりです。この映画を観て、金子さんのことを知ってくれる人が増えていくのが僕は嬉しいです。それと映画の本筋ではないかもしれませんが、自分になにかあったときに、必死に戦ってくれる弁護士もいるんだぞということを感じてもらえれば」と、メッセージを。

 そして、東出から「エンドロールまで見ごたえのある作品になっていると思います。物事は視点や視座を変えるといろんな見方ができるのではないかと思います。この作品は弁護団側から撮ったのでそう感じると思いますが、検察のストーリーラインになったら見え方は変わるのではないかと思います。金子さんのお姉さんとお話していて『出る杭が打たれない社会になってほしい』『世の中には不条理が満ち溢れていて胸にしまっておくことになると思っていたことがこのような形で表に出してもらって奇跡のよう』とおっしゃっていました。金子さんの真実とういのがこの映画に焼き付けられたのではないかと感じました。この映画の中での金子勇さんの真実が届けばいいなと私は切に思っています」と、願いを伝えイベントを終えた。

 映画『Winny』は公開中!

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