櫻井孝宏「呪術廻戦 懐玉・玉折」中村悠一の「高専時代の五条っぽい」部分?

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 5月30日公開予定の『劇場版総集編 呪術廻戦 懐玉・玉折』。そのオフィシャルインタビュー第3弾として夏油傑役の櫻井孝宏のインタビューが公開となった。

 『呪術廻戦』は『週刊少年ジャンプ』(集英社)で漫画家・芥見下々氏が連載中の作品でシリーズ累計発行部数9000万部(デジタル版含む)を突破する大人気コミック。2020年10月から連続2クールでTVアニメ第1期、TVアニメ第2期にあたる『懐玉・玉折/渋谷事変』が2023年7月から12月まで放送され反響を呼んだ。1期と2期の間には初の映画化となる『劇場版 呪術廻戦 0』も上映され全世界興行収入265億円の大ヒットを飛ばしている。今後、続編となる『死滅回游』の制作も決定しており、盛り上がりを見せている。

 以下、インタビュー主なやり取り。

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 ――TVアニメ第1期と第2期の物語では、夏油というキャラクターの印象や、五条と夏油の関係性に大きな変化が見られます。初めて「懐玉・玉折」の物語に触れた際、その変化についてどのように感じられましたか。
 櫻井:第1期収録後に物語に触れてしまったので、やはり夏油のことを“自分が表現するキャラクター”として見てしまって、「大変な役になるな」と。ただ、第1期や劇場版の時もかなり考えさせられるディレクションが入っており、色々と複雑な人物だということはわかっていました。それを受けての過去を描く「懐玉・玉折」だったので、そこからそぎ落としていく作業というのは、収録していて楽しかったです。個人的には、この順番でアフレコできたことが良かったのではないかと思っていますね。現在の姿を知った上で過去に触れられたことで、よりキャラクターに気持ちを寄せられました。

 ――「そぎ落とす作業が楽しかった」とのことですが、具体的に夏油を演じていて楽しい・面白いと感じたシーン、また難しかったところは?
 櫻井:TVアニメ第2期でいう1話にあたるところです。五条と軽口をたたき合ったり、理子ちゃんを迎えに行く時の電話で「一人称“俺”はやめた方がいい」と忠告したり、2人の関係性が垣間見えるシーンがとても好きでした。実は、ああいった日常会話の方が難しかったりするんです。特にこの「懐玉・玉折」においては、日常会話を“特別”にはしたくなかった。できるだけ“当たり前”を表現しようとしたのは、非常に淡い作業ですが、とても難しかった部分ですね。

 ――そんなシーンを今回、劇場で見ることができます。『劇場版総集編』をご覧になった感想をお聞かせください。
 櫻井:5話に分けて見るのと、全部通して見るのでは、やはり印象が変わりますね。新しいものを見ている感覚になりました。通して見ると、冒頭での夏油の独白が後半にこんなに響いてくるものなのかと。時間もちょうど2時間程度ですし、まるで劇場版のために作られたようだと思いました。

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 ――「AnimeJapan2025」のステージで紹介された、ファンのアンケートで選ばれたシーンの中にも、その冒頭に繋がる夏油のシーンが入っていましたね。
 櫻井:あの姿は頭にこびりつくでしょう! あんなうつろな目で「猿め」とつぶやくんですから……。彼がどうしてああなってしまったかという過程を一気に見ることができるのも、『劇場版総集編』になって良かったと思ったポイントでした。分割で見ていた時には取りこぼしていた感情もあったのだと気付けました。

 ――本編に新録シーンはないですが、新規ミニアニメの「劇場版総集編じゅじゅさんぽ」が挿入されます。
 櫻井:あれもズルいですよね!五条、夏油、硝子の3人が映画を観ている様子が映し出されて、劇中には描かれていませんが「きっとこうやって3人一緒に映画を観た日もあったんだろうな」と彼らの青春の一幕を覗いているようで……そんなエモいシーンを作る制作陣は意地悪だなぁ~と(笑)。でも、だからこそ本編が映えるというか。彼らの座っている位置関係も含めて3人の“らしさ”みたいなものを感じました。

 ――アニメシリーズのアフレコ当時を振り返り、キャスト陣との掛け合いなどで印象的だったエピソードがあれば教えてください。
 櫻井:伏黒甚爾役の子安武人さんとのシーンは、やはり印象深いです。甚爾はとても強いキャラクターですが、アフレコ現場での子安さんの存在感も凄まじいものでした。淡々としたやり取りの中にも怖さが潜んでいて、それが子安さんの佇まいからも感じられるんです。聞くところによると、子安さんはもともと作品がお好きで、甚爾をやりたかったのだとか。それを聞いて「なるほど! ピッタリなわけだ!」と思いましたね(笑)。

 ――五条役の中村悠一さんはいかがでしょうか?
 櫻井:五条と重なって見えることがありますね。中村くんのシニカルなところなんか、高専時代の五条っぽいなと(笑)。「懐玉・玉折」の中で五条が「天上天下唯我独尊」と言うシーンがあります。原作を読んでいて「中村くんはこのセリフをどう表現するんだろう?」と気になっていましたが、彼はあの五条の表情や心情などを汲み取って、“表現しすぎない”お芝居をしていました。あれを「どうだ!」という風に表現してしまうと、とてもチープに見えてしまっていただろうなと、中村くんの表現を受けて気づかされました。

 ――櫻井さんご自身は、夏油と共通しているところはあると思いますか?
 櫻井:共通点ではないですが、私はこの作品に登場するキャラクターの中で、夏油に一番共感できます。だから、彼は道を違えてしまいましたが、それを悪いように言いたくないんですよね。おそらく彼は優しい人だから、「弱気を助け、強きを挫く」という考えの解釈が変わったんじゃないかと思います。アニメではその過程が2時間ほどの尺に収まっていますが、実際は何年もかけて徐々に変化していますから。その間、相当悩んだと思います。離反してから五条に会った際、夏油は「“覚悟”は決めた」ではなく「“生き方”は決めた」と言っているんです。それまでとは打って変わった晴れやかな表情を浮かべているのも印象的で、九十九由基に言われた「どちらを本音にするのかは、君がこれから選択するんだよ」や、灰原 雄の「自分にできることを精一杯頑張るのは気持ちがいいです」という言葉など様々な要素を受けての夏油の答えがやっと出たんだなと感じました。

 ――「懐玉・玉折」の中で、ご自身が好きなキャラクターを教えてください。
 櫻井:自分と重なるところもあるし、アニメ的なキャラクターとしてのディテールも含めて、やはり夏油が好きですね。

 ――『劇場版総集編』の公開を楽しみにしている皆さんに向けて、メッセージをお願いします。
 櫻井:TVシリーズを見て展開をご存知の方も多いと思いますが、通して見ることで気付けなかった情報を拾えるし、違う感情や気持ちが芽生えると思います。それまで見えていた色が青だとしたら、それが少し濃くなるような。劇場の大きなスクリーンと良い音響環境の中で、ぜひその変化を味わって、楽しんでもらえたらと思います。

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