ライブイベント『ラブライブ!サンシャイン!! Aqours Finale LoveLive! ~永久 stage~』(以下、『永久 stage』)が6月21日と6月22日に埼玉・ベルーナドームで開催。スクールアイドルグループ『Aqours』の9人最後のワンマンライブにして“フィナーレライブ”と銘打たれ、集大成といっても過言ではないステージが繰り広げられた。
本原稿では、レポートとはまた少し違った2日間会場で取材をした本サイトスタッフの視線を交え、これまでの軌跡とあわせて、このステージの魅力をお届けしてみたい。
開演直後、観客たちにいきなり驚きの声を出させたのは、黒澤ダイヤ役の小宮有紗。木の棒を手に1人ステージに現れ『Aqours』の文字を砂浜のセットに描いたシーン。2016年7月よりTVアニメ1期、2017年10月よりTVアニメ2期、そして2019年1月公開の『ラブライブ!サンシャイン!! The School Idol Movie Over the Rainbow』をもって、『Aqours』メンバーの物語には一区切りついている。
これまでにもライブイベントやファンミーティングで、アニメをなぞるような演出やオリジナルでのサブストーリーなどは見られたが、アニメ本編で一部しか描かれていなかったシーンを、新規シーンとしてその全貌をキャストが演技で見せる。これまで6年間誰も見たことがなかったシーンがオープニングアクトになるというのは、先例のないさまざまなことに果敢に挑んでいった『Aqours』の姿勢そのものを現していたのではないだろうか。それは、その後の登場シーンで、こうした音楽イベントでは当たり前のようになっている派手なアタック映像を使うのではなく、静かな波音をバックにしたキャスト登場シーンにも現れていたように感じる。
そして始まったステージの1曲目は両日ともに、2021年6月にリリースされた『DREAMY COLOR』。
同楽曲は『Aqours』キャストによる初の実写PVということでも話題を集めた1曲。すでに、メンバーの物語には区切りがついている状態だったが、リリース年の2021年末に開催された『ラブライブ!サンシャイン!! Aqours EXTRA LoveLive! ~DREAMY CONCERT 2021~』で高海千歌役の伊波杏樹はこうスピーチしている。
「『Aqours』のストーリーをこれからどうしていくんだろうと。9人それぞれメンバーに対して思っていることがあって、でも、このステージがないと、彼女たちの道を走っていくことができなくなってしまうと思うんです。私達自身メンバーのことを1人1人大切に思う気持ちと、メンバーに会いたいと思って来てくれるみなさんがいないと『Aqours』の物語は進んでいかないと思いました」「そんな、『Aqours』の物語の先の先の先を一緒に作ってくださいますか?」
(参照記事:伊波杏樹 Aqoursの「物語の先の先の先を一緒に」や斉藤朱夏にとって「家族」、小宮有紗は感極まって涙なども)
これまでアニメ本編という『Aqours』メンバーたちが紡いできた物語を演じて表現してきたキャストたち自身が、今度はメンバーたちの物語を紡ぎ出すという転換点になった1曲だったのではないだろうか。そんなメンバーとキャストの思いの重なりが深い『DREAMY COLOR』だからこそ、1曲目になったのではないか……と、想像する。その思いは冒頭の小宮が演技によってメンバーの物語を紡ぎ出すことにもつながっていたのではないかと思う。
ここで、2025年6月30日で活動10年を迎える『Aqours』の歴史を軽く紐解いてみる。静岡・沼津市の海辺の町・内浦を舞台としたオールメディアプロジェクト『ラブライブ!サンシャイン!!』としてスタートした。
ライブイベントにおいて、いわゆるナンバリングライブと呼ばれる公演のはじまりは、2017年2月25日と2月26日の横浜アリーナでの『ラブライブ!サンシャイン!! Aqours First LoveLive! ~Step! ZERO to ONE!!~』。その前年2016年7月2日からTVアニメ『ラブライブ!サンシャイン!!』第1期が放送されており、このアニメ放送を追体験できるような構成で届けられた。
このTVアニメ放送が始まった、2016年という年は3月31日と4月1日に『ラブライブ!』から誕生したスクールアイドルグループ『μ’s』が東京ドームで最後のワンマンライブ『μ’s Final LoveLive!~μ’sic Forever♪♪♪♪♪♪♪♪♪』を開催。『μ’s』は2015年大晦日の第66回NHK紅白歌合戦に出場しており、その約4ヶ月後のライブと、ファンのみならず社会からも注目を受け、人気絶頂といっても言い過ぎではないであろうタイミングでの最後のワンマンとなった。
それだけに『ラブライブ!』シリーズから2組目となった『Aqours』にとっては認知してもらうという意味では追い風になったかもしれないし、『μ’s』という先輩の後を受けるということで、とてつもないプレッシャーがかかっていたかもしれない……。
その当時の空気感は、6月22日の『永久 Stage』Day2でのスピーチで伊波がその一端を窺わせている。「最初は『Aqours』って……と、思っていた人がいるかもしれないね。でも、そんなこと関係なくて。私、『μ’s』が大好きで、そうやって風当たりを覚悟してたけど覚悟以上だったり笑えない日もあった」と決して順風を受けてのものではなかったと告白しており、「きっと3年で終わってたかもしれない、もしかしたら1年半だったかもしれない。そんな未来がなかったわけじゃないんです。だからここまで来れたのは、みんなのおかげなんです」と――。
アニメ本編でメンバーたちが言っていた「この仲間と一緒に」「私達の道を歩こうと」「起きることすべてを受け止めて」「すべてを楽しもうと」「それが輝くことだから」「あの日、0だったものを1にするために」。すべてを受け止めて茨の道を切り開くように走り続けた彼女たちだからこそ、その“風当たり”をいつからか“風を受けて”に変えたのではないだろうか。
また、“みんな”にはファンはもちろんのこと、支え続けたスタッフも入っていたのではないだろうか。『永久 Stage』Day2のラストソング『勇気はどこに?君の胸に!』を終えた後、彼女たちのトロッコがPA卓と呼ばれる音響スタッフたちの前を通りかかったときのことだ。『Aqours』のキャストたちはPA卓の方にも手を振っており、それを見たPA卓のスタッフの方々が立って“ぶんぶん”といった様子で大きく手を振り返していた。そのスタッフたちの行動が示す通り、『Aqours』キャストたちはスタッフたちの心をも掴んだからこそ、ここまでのライブができたのではないかと思わせる一瞬の出来事だった。最後の最後にスタッフのエンドロールで終わったというのも、スタッフも含めて“チーム『Aqours』”だった。その現れのように感じる。
キャストたちはたびたび涙を見せていたステージだったが、不思議と、湿っぽいものには感じなかった2日間のライブ。
Day2の最後に舞台を降りる直前、キャストとして舞台を一度降り、最後尾だった小原鞠莉役の鈴木愛奈が「『Aqours』はずっとみんなのことが大好きだから、覚えておいてね!」と叫んだ。その直後、先に階段を降りたキャストが今度はメンバーとして「ずるい」と松浦果南役の諏訪ななかの声に鈴木が鞠莉として「果南!?」と反応する。小宮もダイヤとして、「鞠莉さん独り占めはダメですわ」、渡辺曜役の斉藤朱夏も曜として「ずるいー!」、1番最初に降りた“ヨハネ”こと津島善子役の小林愛香も善子として「ヨハネを置いていかないでよ~」とメンバーとして全員がステージに戻ってくる。このとき全員が1列になって叫んだ「みーんな!大好き!!」の声は、説明こそなかったが、キャスト&メンバー18人によるあいさつだったように思えてならない。
ファン・スタッフ・キャスト・メンバーに寄り添い続けた『Aqours』の物語は、今後本ライブのようなワンマンの大掛かりなものはないかもしれない。『永久 Stage』のメインステージ上に表示されていた砂時計は、反転し、また時を刻みだすエンディングだった。これは、会いたいと思い続けていれば、またどこかで、光り輝くような眩しさを放つ、『Aqours』全員がそろった笑顔に出会える日が来るのかもしれない……。
そんな期待をしてしまいたくなるような余韻が残る“フィナーレライブ”だった。
取材・文:水華舞
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