北山宏光『醉いどれ天使』への「意義」!深作健太氏らと会見で渡辺大「稽古は追い込まれてはいる」

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 俳優・北山宏光が10月16日に都内ホテルで主演舞台『醉いどれ天使』(演出:深作健太)製作発表会見を演出の深作健太氏、俳優・渡辺大、横山由依、岡田結実、阪口珠美、佐藤仁美、大鶴義丹とともに開催した。

 黒澤明監督と俳優・三船敏郎が初めてタッグを組んだ同名映画を舞台化した作品。1948年、2021年の舞台版それぞれの作品が持つ魅力を引き継ぎつつ、新たな視点で『醉いどれ天使』の世界を紡ぐ。北山は三船が演じた闇市を支配する若いやくざ・松永役を演じる。

 以下、会見コメント。

 ◯演出:深作健太
 この作品は1947年の戦後2年を描いています。不思議なご縁ですが、祖母が映画に出演していたので撮影の思い出話を聞いていましたし、父の深作欣二はこの映画を観て映画監督を目指した縁のある作品です。
 21年舞台版のときはコロナ禍だったので、物語にでてくる結核のパンデミックと重なり、タイムリーだったことが記憶に残っています。
 魅力的な蓬莱さんの脚本を、新たなキャストで上演できるのが楽しみです。蓬莱さんの脚本は映画シナリオを受け継ぎながら演劇として見事にアダプテーションされています。今も戦争が残っていることを忘れずに、戦争のない日本を作った当時の人々を描きたいと思います。
 稽古は順調で楽しみながら進めています。セットには瓦礫の山を作る予定です。残りの期間でいかにブラッシュアップできるか、ご期待ください。

 ◯北山宏光
 この歴史ある作品に携われることをとても嬉しく思っておりますし、この令和にまた産み落とすことにとても意義を感じています。
 観てくださった方に何か心に残るもの、そしてそこからまた咀嚼して何か体に染み込んで考えていただける作品を目指して作っております。松永は一見無骨なんですが、実はものすごく人間らしい柔らかい心の弱さみたいなものがあり、僕はそれを台本から抽出して観た方に共感してもらえるような落としどころを表現することで、僕なりの松永を演じられるのではないかなと思います。
 きっと観てくださった方の心に重厚感のあるメッセージが届く一方で、深作さんが演出することによって、かなりエンタメにも昇華しているので、ぜひとも足を運んでいただけると嬉しいです。

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 ◯渡辺大
 この歴史ある作品に参加できて光栄に思います。伝統的な作品ですが、深作さんがパンクにロックと新しい要素を入れてくださっているので令和版新解釈の『醉いどれ天使』になっています。映画や21年版の舞台では松永と真田の関係性が親子のような感じだったのですが、北山くんとは歳があまり変わらないので兄弟のような、明るい光のなかに松永を引きずりこむエネルギッシュな真田にできたらと考えています。稽古は追い込まれてはいるのですが、肉をつけ血をつけている最中です。これからさらにパーツを加えて初日を迎えたいです。ぜひご覧ください。

 ◯横山由依
 戦後すぐのお話ではあるのですが、今の時代ともリンクするところがあるなと稽古をしながら感じています。座長の北山さんをはじめ深作さんが稽古場の雰囲気を穏やかに明るく作ってくださっているので、稽古場に行く足取りがとても軽いです。
 演じるぎんという役は夢や希望に対する気持ちがすごく強い人だと思っていて、そこへの原動力がぎんを突き動かしてると思うんです。それは自分だけでなく、他人の夢や希望を応援できるような気持ちを持っているのだと思います。エネルギッシュな作品になると思いますので、お客様にエネルギーをお届けできるようにしたいです。

 ◯岡田結実
 この作品は戦後すぐのお話で、今の時代も戦争に目を背けられない、向き合っていかなければならないと感じています。
 深作さんがいつも仰っているように、戦争を偽物にしたくない、本当にあるものだからという思いを込めて、偽物を演じないようにしたいです。
 ずっと舞台に挑戦したいと思っていたので、初舞台が素敵なキャストとスタッフの皆さんが揃うこの作品で、お芝居ができる幸せを日々噛み締めています。
 私が演じる「ぎん」には戦争がなければこうだったのにという思いに愛情の深さを感じていて、深く向き合う力はそう簡単には真似できないので、現実に向き合う力強さを見習って舞台に挑みたいです。また、そんな「ぎん」だからこそ、松永や自分を変えていける一人になっていくという部分も表現できたらと思っています。

 ◯阪口珠美
 この日本映画史に残る名作に、こんなにも素敵で豪華なキャスト・スタッフの皆様とご一緒させていただいて、実は今も緊張でいっぱいなんですが、残りの稽古で緊張を自信に変えて奈々江の生きる力や強さをステージで出せるように、一生懸命頑張りたいです。奈々江はすごく現実主義な女性で、生きるためなら手段を選ばないすごく強い女性です。でも、そうしていかなければ生きていけない世界というのはすごく虚しくて可哀そうで、その奈々江の強さの裏にある本当の隠れた気持ちをうまく汲み取って、表現できるように頑張りたいと思います。

 ◯佐藤仁美
 本を読んだときはなんて泥臭い作品なんだと思ったのですが、読み込んでいくとなんて色気のある男たち、そしてその中にいる女たちも、なんて強い人間たちの生き様なんだろうと感じました。この作品に出てくる女性は脆く見えるのですが、様々なバックボーンがあって実は共通して全員芯が強くて情に厚いイメージです。
 稽古は後から参加だったので迷惑をかけないようにみなさんに追いつけるように必死ですが頑張っています(笑)。ぜひ劇場にお越しください。

 ◯大鶴義丹
 私の演じる岡田という役は、戦後に新しい人生に向かおうとする松永の邪魔をして、日々松永を地獄に引きずり込むように頑張って稽古しております。この話は、戦争でみんな等しく傷ついて、そこから新しい世界に向かおうという中に、私が演じる岡田1人だけが、そんなのは認めないと全員の邪魔をする、とても悪魔的な役なんです。でも岡田のそういう部分を対比的に恐ろしく演じられれば、新しい世界に向かいたいというその光が逆に輝くんじゃないかと思っております。よろしくお願いします。

 以上

 舞台『醉いどれ天使』東京公演は11月7日から11月23日まで明治座にて、名古屋公演は11月28日から11月30日まで御園座にて、大阪公演は12月5日から12月14日まで新歌舞伎座にて上演予定!

 <あらすじ>
 当たり前のように存在していたすべてが失われた、敗戦後の東京。
 戦争で帰る場所を失った人々は、荒れ果てた都市に流れ着き、闇市でその日その日を生き延びていた。
 ある夜、銃創の手当てを受けに、闇市の顔役・松永が真田の診療所を訪れる。
 真田は闇市の界隈に住む人々を診る町医者で、酒に溺れ口は悪いが、心根は優しく一流の腕の持ち主。
 顔色が悪く咳込む松永を、診療所に住み込みで働く美代も心配する。
 一目見て肺病に侵されていると判断した真田は治療を勧めるが、松永は言うことを聞かずに診療所を飛び出し、闇市の様子を見回るのだった。
 居酒屋で働く同郷の幼馴染のぎんは、そんな松永を心配しつつも、密かに想いを寄せるようになっていた。
 しかし、着々と病魔が松永を蝕み、ダンサーの奈々江は彼から離れていく。
 戦後の混乱の中、松永の采配によって落ち着きを保っていた闇市だったが、松永の兄貴分の岡田が出所し、闇の世界の力関係に変化が起きていくのであった…。

 ※記事内写真は撮影:田中亜紀

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